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『サンタと天使が笑った夜』⑦by.高瀬結衣
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「アキ」
振り返った男が俺の名前を呼んだ。
「ハラさん、だっけ」
怪訝そうに表情を曇らせたハラさんを見つめながら、俺は慎重に、ゆっくりと、言葉を声にした。
「俺、からっぽだよ?」
そんな自分の言葉がなんだか妙に可笑しくなって、思わずふっと頬を緩めて笑えば、ハラさんもほんの少しだけ、笑ったように見えた。
それからハラさんはさっきと同じようにまた俺の手首を片手で掴み、今度はゆっくりと、エレベーターへ向かって歩き出した。
この時はまだ、なにもわかってなかった。
あなたの気持ちも、俺の気持ちも。
◇◇◇
子供の頃は信じてた。
クリスマスには奇跡が起こる。
両手にいっぱいのプレゼントを抱えたサンタクロースが、俺のところにもきてくれる。
なんの価値もない、からっぽの俺のところにも。
いつかわかるときがくる。
あなたは俺の、誰よりも愛しいヒト。
<メリー・クリスマス>‐終‐
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