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『メルティ・キス』②by.蜂乃
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「何、煙草吸ってるんですか! 乾杯するんでしょ!」
「はいはい。じゃあ、ジョッキ持って。えーっと……、俺たちの聖なる恋人の夜に祝福を! かんぱ~い」
ズルン。俺の腕がテーブルから滑り落ちる。
なんで、そうなるんだ。
もうすぐでぶつかりそうだったジョッキを、素早く離す。
「ちょっ! ちょっと待って。それで乾杯したくないです」
「って、何だよ。しろよー」
すると、先輩は唇を尖らせて、ブーブーと拗ね始めた。お前は、女子か。とにかく、可愛くも何ともない、むしろ、気持ち悪い訳で。
そして、しょんぼりとビールジョッキをテーブルに置いたのを見て、俺はニヤリ、とした。素早く自分のビールジョッキを、それに近づける。
「い、や、ですっ! 先輩の馬鹿が治ることを祈って、かんぱ~い、です!」
カツン!
「……あ、てめっ……くそ、乾杯!」
チッと舌打ちしつつ、先輩は投げやりにビールをグビ、と飲んだ。
はは、してやったり。
俺もジョッキに口づけ、気分がよかったためか、一気に飲み干してしまった。
「ぷはあっ!」
「おいおい、一気に飲むなよ。酒弱いくせして」
「弱くありませんよ! 先輩みたいに悪酔いなんてしませんから」
「悪酔いって……いつも飲んだ時に介抱すんのはどっちだよ」
じと目で見てくる先輩に、俺は唇を尖らせる。
た、確かに、記憶ない時が多々あるかもしれないが、でれっでれにウザ絡みしてくる先輩よりは、きっと幾分かマシなはずだ。悪酔いした先輩は本当に最悪で、会社の飲み会で何度キスされそうになったことか。というか、みんなも乗っているため、何度か公開キス済みである。
これは、人生最大の汚点に過ぎない。
「ほらすぐ口尖らせて。キスすんぞ、コラー」
「うわ……それセクハラ……」
ニタァ、と先輩が不気味な笑顔を見せる。
ドン引きだ。
そして、なんだろう。どこかデジャヴを感じるような。
「もうなんでもいいわ」
「開き直ったし……」
ちゅ。
一瞬だけど、柔らかな感触が唇に。
なん、だ……?
パチクリとする俺の瞳。ニカッと笑顔を見せる先輩。そして、少し時間を置いて、やっとのことで状況を把握出来た俺は、顔がみるみると赤くなって。
「………………!? っ、ちょっ、ここどこだと思ってんですか!」
何してくれてんだ、コイツ!
やられた。先程の仕返しだろう。イライラする。しかし、ニコニコとした先輩の表情が腹立たしいことは否めないが、なぜかこんなことで心臓をバクバクさせている俺の方が、腹立たしく感じていた。
「なあー、褒めてくれる?」
「は? もう意味わかんないんすけど!」
なんで、先輩はそんなに余裕なんだ。そんなの、ずるくないか。
熱くなった頬を手の甲で冷やして、鼻をシュンと啜る。そうしていると、黒い包み紙でシンプルに包装された小さな箱状のものがテーブルに置かれた。
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