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『present for.』②by.椋太郎
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「本当ですか?」
「本当だよ」
「…あ、あぁの!ここで!ここで少し待っててください!少しだけ!ね!」
バタバタと騒ぎ出した彼はサンタ帽を乱暴に脱ぎ捨てたかと思うと、店内に入るなり店長!と騒ぎ出し、自動ドアが閉まると共に声が聞こえなくなった。
雪も降ってるし、寒いし、早くしてくれないかな。と思ったのだが彼は本当に五分もせずに出てきて、今までベンチコートを来ていたのに私服に着替えていて、より一層イケメン度を上げて帰ってきた。
「すいません!お待たせしました!」
「え?うん、あぁ…えっと?」
もう本当に、にこーっと。
今まで生きてきた中でこんなにもにこーっと笑う人間見たことないという位にこーっと笑ったかと思うと、売り物のケーキを一箱手にして、もう片手は俺の手のひらを引いて歩き出した。
お金も払わずにその場を離れようとする彼に、続いて出てきた店員は何も言わず、むしろお疲れーと手を振って見送る。
俺はわけがわからず彼と店員を何度も見ていると彼は笑いながら、お祝いしましょうと言った。
「どうぞ!」
「…どうも」
流れ流れて、引き摺られるまま一つのアパートに案内された。
彼が開けたのだから、彼の部屋なのは分かりきっている事だけれどなぜ俺はここにいるのか。それが全く見当もつかない。
彼の期待に満ちた眼差しとか、ここに来るまでの間ずっと崩れる事のない笑顔だとか、そんなのに誤魔化されて普通に部屋にお邪魔してしまったがよくよく考えると変過ぎる。
「あー…、普通に来ちゃいましたけど、俺ケーキ買おうと思っただけで…」
「なんで敬語なんですか、多分俺のが年下なんで無しで!それで、くつろいで下さい」
「あぁ、…そうなの」
出された温かいコーヒーと、すすめられたソファにすぐには帰れないのだと理解して俺は溜め息を吐いた。
彼は甲斐甲斐しく俺のコートをハンガーにかけたり、暖房入れたり雪が降っていたからとタオルまで寄越して対面に座ってやっと落ち着いたかと思うと、今度は体がそわそわと落ち着きが無い。
変な奴だと彼を見ながら、もうすぐ天辺を超える時計の針に結局寂しい男ばかりのクリスマスだったが、今年はイケメンの仲間と過ごす、一人じゃないクリスマスだからまあ良いかとコーヒーに口を付けた。
「あの!」
「ん?」
「これ…!」
「…なにこれ」
「プレゼントです!」
「…なんで」
「えっ…もらってくれるって…」
「なに、あれケーキの売り文句じゃ無かったの」
「ち、違います!これがプレゼントです!」
「開けても?」
「どうぞ!」
彼から渡された掌に乗る程の箱は、クリスマスカラーで包装されていた。
真っ赤なリボンを解いて丁寧に包装を開くと、真っ赤な箱に金文字で有名なブランド名があらわれてギョッとした。
俺はその箱を丁寧に彼の前に返すと、彼は箱を一度見て首を傾げる。
「ごめん、包装開けちゃったけど…」
「え?」
「渡す人間間違えてるでしょ、というかプレゼント間違えてるでしょ」
「間違えてません!」
「いや、間違えてなかったとしてもこれは貰えない。俺お返し出来ないから」
「お返しなんかいりません、返事だけ貰えればいいんです」
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