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【死に際の言葉】死ぺい 2
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そのまま、俺たちは自分の部屋のベッドに横たわり、朝を迎えた
体を起こしてカーテンを開けると、外は雨が降っていた
ああ、雨の日は電車がいつも以上に混んで大変なんだよな
そう考えながらじっと窓の外を見つめていると、下の階から黒兄の声が聞こえた
黒兄、起きるの毎朝早いよなぁ、まだ6時半だぞ
クロ「絵広ー、朝ご飯できたから降りておいで」
ぺい「はぁい」
俺は返事を返すと、眠い目を擦ってドアノブを捻った
ペタペタとスリッパの音を響かせながら階段を降り、洗面台に向かって歯と顔を洗う
そして、濡れた自分の顔を見つめて、1日の気合を入れた
リビングに向かえば、黒兄が用意してくれた栄養バランスのとれた美味しそうな料理が並んでいる
俺が自分の席に着くと、キッチンから黒兄が来る
クロ「おはよう、じゃあ、食べようか」
ぺい「うん」
俺は、黒兄と一緒に胸の前に両手を合わせていただきます、と小さくお辞儀をする
そして、箸を手にとって食べ物を口に運ぶ
黒兄の料理は、どんな食材でも美味しく仕立て上げてしまうところがすごいのだ
前世と全く変わらない
クロノアさんも、料理はとても上手だったのだ
俺は黒兄の料理を美味しく頬張りながら、幸せに浸っていた
食べ終わって食器を片付け、俺は寝間着から大学へ行く用の私服に着替えた
黒兄も会社のスーツを身につけ、俺と一緒に玄関へと向かう
クロ「忘れ物無い?大丈夫?」
ぺい「もう、黒兄は心配しすぎだって」
この人はどうも、俺が小さい時から母親のような役割を持っていた
うちの両親が離婚し、父子家庭で育ってきた俺たちにとっては、黒兄が母親の立場にあり、家事を難なくこなしていた
俺たちは外へ出ると、それじゃあ、と手で合図を送る
俺の大学と黒兄の職場は全く真逆の道を行かないといけない為、玄関でもう別れてしまう
俺は手を振りながら黒兄の姿が見えなくなるまで見送ると、橙色の傘をさして歩いた
駅へ向かって電車を待つ事5分、電車がいつもの決まったガタン、ゴトン、という音を立てて俺の前の現れる
俺は大量の人間と一緒に、その電車の中へなだれ込むように入っていった
電車に揺られる事、20分
電車が俺の向かう大学の最寄り駅に到着し、俺は電車を降りる
ここは大きな横断歩道のある交差点が厄介だ
人混みはそこまで好きじゃないんだ
俺は少し憂鬱に思いながら、電車で閉じていた傘をまたさして、歩みを進める
雨のせいで視界が悪い、誰かにぶつかってしまいそうだ
すると、やはり思った通り、誰かの傘とぶつかってしまった
ぺい「あ、すみません」
紫色の傘をさした顔があまり見えないその人に一礼して、その場を立ち去ろうとする
だが、俺はそこでぐいっと腕を掴まれて、思わず肩が震えた
びっくりした、一体何なんだ
俺は振り返って、相手の様子を伺う
つもりだったが、その相手が誰かわかった瞬間、俺は伺うなんて冷静な判断はできなかった
俺の腕を掴む、紫色の傘をさした少年
その少年が顔を上げる
紫色のショートヘアに、大きな瞳
唇を食いしばって目を潤ませていて、切羽詰まった顔をするその子に、俺は暫し動揺していた
運命というのは、神のイタズラか、悪魔の罠か
はたまた、天使の贈り物か
新品そうなブレザーの袖を濡らして俺を掴む腕が震えている
そして、同じく震えた、懐かしさを感じる高い声で、俺に問いかけた
「ぺいんとさん、ですよね?」
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