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「他に用が無いなら俺は部屋に戻るぞ」
「一つ聞きたい事がある」
「今日はヤケに珍しく俺に話しかけてくるのな」
明日は槍か剣が降ってきそうな状況に夢を見ているのではと思ってしまったが、これは夢では無くまぎれも無い現実である。
世間では普通の兄弟の会話に聞こえる事であろうが、残念ながらこの家の中ではありもしない非現実な出来事。
この場に母がいたのならば、この二人に対して目を点にしていたであろう。
「最近変わった出来事起きて無いか?」
「今の状況がここ最近で一番変わった出来事なんだが……」
「誰かに喧嘩吹っかけられたりとか、そっちの話し聞いてんだ屑が!」
屑と暴言を吐かれても、「そんな言葉足らずで理解など出来る訳が無いだろう。自身は超能力者か何かか!?」というのが現時点でのスズヤ言い分であった。
昔から人に愛されず過ごしてきた分、通常よりは人間観察が得意ではあるが、それは喜怒哀楽、次起こす行動などの予想する事が出来る程度。
先ほど述べたように可能性は述べられても、咄嗟的に人の脳内など的中させられる人間などいない。そんな人間がいるのなら、スズヤのような悲劇の主人公または悲劇のヒロインが生まれる事は決して無いであろう。
「喧嘩ね……お前が始末そこねた他校の奴が逆恨みで俺を呼び出したり、お前が振った女子に階段から落とされかけられたりするが、それは変わった事でも無いし普通の出来事だからな」
淡々と喋り続けたが、リクトの目が一瞬細くなるのが見えたスズヤは直様口を閉じる。
彼が機嫌を損ねるも無理は無い。「お前が始末そこねた」こちらの台詞はプライド高き俺様不良リーダーに対して喧嘩売っているも同然であろう。
面倒ごとは御免なはずであるのに、いつの間にか自身で面倒ごと増やしてしまった後悔の渦内で、ひっそり殴られる覚悟を決めていれば、展開は予想外な方向へと流れて行く。
「連中、お前どうやって追っ払ってるんだ?」
「はい?」
「やっぱ、なんでもねーよ」
舌打ちと共に血塗れの体を洗い流しにシャワーに向かうリクトを慌てて引きとめようと声をかけようとしたが少々遅く、リクトは視界から消えた。
聞き間違いなのであろうか、先ほどの台詞だと心配してる兄のように見えてしまう。今まで赤の他人として接してきた彼に限ってそんなことは無いであろうと考えるも、色々考えてしまった。
数日後、スズヤはあの時の兄として一瞬でも意識した自分自身を殴り飛ばしたい、もしくはあの時の兄を蹴り飛ばしたいと強く思うこととなるであろう。
あの時の台詞は決して夢で無く、現実の1ページであって、リクトの言葉の真意は別の意味があったのだ。
その意味を知った時、さらに一般から外れ行くのを感じる事であろう。
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