アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
2-1
-
*
彼らの前で感情が剥き出しになるのはこれで二度目。
嫌、スズヤに対してははじめてのことであろうか。
少年はビーチサンダルを寂し気にペチペチ鳴らし、空気を悪くさせたことに罪悪感を抱きながら、似合わぬため息をこぼす。
過去に触れられれば、感情のコントロールが効かない。スピードを下げようと努力するも、突き進んでしまう。
そんな仲間達は悪気も無ければ、罪も無い。悪いのは自分自身であると責め立てれば、見えぬはずの尻尾や耳が、下がっているように見えてきてしまう。
あぁ、海と空はこんなに広くて大きいのに、少し過去に触れただけで、金髪の見覚えのある男までも砂浜でナンパしてる風景が見えるなんて。何故自身はこんなに弱くて小さい生き物なんだろうと、似合わぬポエムのような事を考えながら。
そんな錯覚が見える砂浜を何事もなく一度、通り過ぎてみせるが、獲物を捕らえる野生の勘が働いたのであろう。眉を寄せて、「ちょっと待てよ」とアスカは歩んでいた足をピタリと止める。
まさか、まさかと先ほどの砂浜へ、恐る恐る振り返るもそこにはピアスを開け、金髪に染め、いかにも弱そうな見慣れた男が錯覚でも無く、きちんとそこに実在していた。
その人物に対して、植え付けられた新しい記憶はマナブが捕らえられたあの日。忘れぬこと無い、仲間が傷つき、そして新たな出会いを果たした晴れた日。
「あ〝ぁぁああ!?」
アスカはガニ股でピシリと人差し指を男に差し、驚きのあまり犬というより鴨に近い、誤った声を張り上げた。
その声は辺り一面届けられ、金髪の少年にも無論届いていたのだが、届いたものを聞けば金髪の残念系男子は便乗するかのように「あ〝ぁぁああ!?」と同じ声、ガニ股、人差し指など鏡に映したように瓜二つの行動を作り上げてみせたので、「真似するんじゃねー!」と阿保なわんこはジタバタと足を交互に地を踏み荒らす。
「なんでお前がいるんだよ!」
「それはこっちの台詞だドチビ!」
「うっせー! 激弱へなちょこ茄子!」
低レベルな口喧嘩を開始するも二人はジリジリと近づき、やんのかやんのかと目と鼻の先でガンを飛ばし合う。
そんな日本のファンキーな少年達を見ては、ナンパに付き合わされた女の子は金髪の元から離れて行き、観光客はその場にすら近寄る気配は無い。
「この前はよくもマーくんを痛めつけてくれたな」
「お前こそ、よくも俺の兄貴を殴ってくれたな」
「その顔でブラコンとか気持ち悪いんですけどー」
「不細工だからって僻むなよなブサメン」
二匹は縄張りを奪いあう獣のようにガルガルと喉を鳴らし、それを後ろから呆れ顔で見つめるは白い霧。
一部始終を見ていたが、なんと低レベルな喧嘩。最近の小学生だってもっと大人びいた喧嘩が出来るというのに、「この二匹は」と呆れかえりながら日傘をアスカの脳天に一撃食らわす。
それと同時に柴犬は「きゃん」と甲高い声を上げながら、涙目でヒリヒリする天骨を必死に手の平で擦りつけた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
50 / 51