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欲求
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俺は恵まれている。
美人で背の高ーい、オカーサン。
金持ちで放任主義の、オトーサン。
二人はラブラブ、喧嘩してるとこは一回も見たことがない。
家は豪邸、総額五億円だよ、ははは。なんて、惜しみなく金を使って、それを隠すこともないオトーサン。オカーサン、それをきいて自分が金持ちの婦人であることに満足してる。二人はラブラブ、何度でもいいましょう。二人はラブラブ。…お金には。
オカーサン、オトーサンのこと好きじゃないくせに、オトーサンのお金が好きなくせに、オトーサンと別れて金持ちの婦人じゃなくなることが怖くて、オトーサンの言いなり。
オトーサン、オカーサンの見た目だけが大好きで、中身は好きじゃないくせに、他の男にオカーサンを取られるのが嫌で誰よりもオカーサンにお金を積み上げる。
俺、その間に生まれた。
俺、その二人の唯一の息子。
俺、その二人が一生一緒に過ごすための、言い訳。
お金だけは自由に使えます。
オトーサンがまっきんきんのカードをくれたから。
だけど、ひとりぼっちです。
オトーサンとオカーサンは基本的に家に帰ってこないから。
海外でふたり、楽しく過ごしているっぽいですよ。俺は日本に置いてけぼりです。何故か。
俺に言い訳以上の価値はないからです。
総額五億円の豪邸で家族が三人そろってご飯を食べたことは一度もないし、小学校の参観日も運動会も親が来てくれたことは一度もないし、中学の間不登校みたいなことしても怒る人はいなかったし、高校で男に脚を開く遊びを覚えても…海外にいるんじゃ知る由もないし?
まあ、とにかく、放任主義で。
放任主義で、うん、だから。なんだろう。オトーサン、オカーサン、あなた達の顔、もう覚えてませんけど。俺、一人であの豪邸に住むのが嫌になったので、捨ててしまったんですけどね。今東京を離れて、大阪に住んでいるんですけどね。どうせ、俺に興味なんてないんだから…どうだっていいよね?
お金なら、腐る程あるよ。
俺のお金じゃないけどね。
いいんだよ、死ぬほど使っても。
最低だって?親の金使って遊んで、なにしてんのって?
まあまあ、僻まないでくださいよ。
いいんだよ。いいの。
俺が、困らせるほどお金を使ったら、もしかしたら帰ってきてくれるかもしれないし?
叱ってくれるかもしれないし?
普通の家庭になるかもしれないじゃん。
俺は、確かに恵まれてる。
食いっぱぐれたことはもちろんないし、顔だってオカーサンに似て綺麗だし、何一つ不自由なく生きてきたし。みんなに羨ましがられるような、自由だし?
だけど俺は、確かに。
心が貧しいんですよ。
寂しくて、寂しくて、寂しくて。
ひとりで寝る日々が恐ろしくて。
誰かに縋りたくて。愛されたくて。
生きていることを許されたくて。
家族でいる理由以外の価値がほしくて。
笑顔を覚えた。
ノリを覚えた。
甘え方を覚えた。
嫌われない方法も覚えた。
なのに、どうして。
俺は未だにひとりぼっちなんだろう。
「ねぇ、お金あげるから抱いてくれない?」
こうやって。仕事のない日はさ。
ハッテン場で無理やりね、男を誘って、金を出してまで抱いてもらったりしてね。
「いくらくれんの?俺、確かにゲイやけど、アンタみたいなひょろひょろタイプちゃうねん。」
「いくらでも。100万?200万?すきなだけ言えばー?」
「…なんやそれ、額でかすぎて現実味ないわ。10万、出せる?」
「あは、やっすいちんこだなぁ」
ねえ、抱いてよ。
タイプじゃなくても抱けるなら、俺のどこかに魅力を感じて勃つってことでしょ。
それってさ、それって、一応、薄汚れてても、一応、愛だよね。
「ただし、恋人を抱くように抱いてね〜?」
安いのは、どっちだよ。
間違いなく俺のほう。だってほんとに安い。カラダもココロもすっかすかで、なんにもないのに愛されたい。
愛されたいけど、恋人は絶対作らない。そう言ったら「理想高すぎるんだよ、お前は。」って言われるけれど、馬鹿、違うよ。
一度でも、恋人になってしまったら。俺はきっと別れが辛くて生きていけない。捨てられることなんて想像もしたくない。
知らなくていい暖かさと、知っていい暖かさがこの世にはある。
愛されたい。
愛されたい。
だけど愛されることを知ったら、もう一人では生きていけない。
それが何より怖いって、俺はわがままで贅沢で理想が高くてどうしようもないクズだね。
だけどさぁ。遊びとは別に、愛されることに妥協したくないのは、…当然でしょ?
女のように喘ぐから。
女のように甘えるから。
女のように振る舞うから。
女より愛して。 俺を愛して。
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