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知らない
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………っは?
意味がわからない。
どうして?どうしてどうしてどうして
皆には僕の今の姿は見えていない。
でも僕は普通に立っている。考えることができる。何も変化は感じられない。
………ただ、足元に血だらけの自分が倒れていることと、瑛に、いや、物に触ることができないことを除いて。
頭を抱えてしゃがみ込む。
どくどくと僕の頭の中に勝手に色んな情景が流れ込んでいる。
後ろから猛スピードで走ってきた車。
ここに僕たちがいるのに、気づかなかったのか、全然スピードを落とした感じはしなかった。そして、車道側を歩いていた瑛の僕よりも一回り小さな体がよろけた瞬間____
僕は頭で何か考えるよりも早く瑛の肩を掴んで歩道側に引き戻して………吹っ飛んだ。
体が動かない。ぶつかった箇所がひどく熱い。のに寒い。とても寒い。
あれ……僕、死んじゃうのかな。
まだ、やりたくてやってないことたくさんあるのに。
高校だって、あと一年残ってるのに。
まだ…まだ………
瑛と一緒に居たいのに。
瑛。瑛。瑛。
ずっと、好きだったんだ。男同士だから、ずっと一緒にはいられないことも、結婚なんて問題外だってことも、何より、瑛が男を、僕のことを好きになってくれるなんて、あり得ないってわかってるのに。
…………でも、せめて、中学と高校、1番人間の記憶に残ると言われているこの時間を、一瞬でも長く瑛と一緒に居たかった。瑛に覚えていて欲しかった。覚えていたかった。
……笑わせたかった…のに。
「………っ瑛、瑛ぁ、あきら!」
何度名前を呼んでも、叫んでも、もう、瑛には、届いていない。僕の姿さえ、見えていない。
………こんな、こんな悲しい結末、僕は知らない。
だって、僕はまだ何も出来てはいないのに___
僕には崇める神様なんていないけれど、ねぇ、神様、もしもいるのなら、これが運命だというのなら、教えて?
どうして?
どうして今なの?
どうして僕は死ななければいけない?
どうして僕は生まれてきた?
何のために、何をするために、僕は、産まれた?
どうして………僕は瑛に恋をしたんだろうか?
だんだんと近づいてくる救急車の音が、僕にはまるで聞こえていなかった。
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