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少女
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白。白。白。
どこを見渡しても、白い。
そんな白い。箱のような場所。
中央に、螺旋階段があるだけの、白い、場所。
ふと気がつくと、そこにいた。
そこに座り込んでいる人々。
段々と、増えたり減ったりしている。
よく見れば、死んだ人ばかりのようで。
足元が、透けている。
にこにことしているもの。独りでぶつぶつと、何かを唱えているもの。
その中に、一際目立つ少女がいる。
その少女は、周りの人とは何処か違って。
本当に少女かどうかもわからない。
性別がよく分からないのに少女、そう言ったのは、髪が、とても長いから。艶々とした、髪が、ふわふわと、少女の背中を覆っていた。
その少女がゆっくりとこちらを向く。
何故か、恐ろしい。
唾を飲む。
ゴクリ。
そんな音が聞こえた気がした。
だけど、この場所に、音なんて、存在しない。
ここが何処かもわからないのに、何故か分かる。何故か懐かしい。
少女が、こちらを向いた。
その顔を見て、僕は叫ぶ。
気が狂ったように。叫ぶ。
何故?何故ここに、貴方がいるのか。
だけれど、この空間に、音は存在しない。
その少女の顔は、瑛の顔だった。
その顔がにこ、と微笑む。心が落ち着く。
こちらへおいで。そう言っているように聞こえる。ふらりと立ち上がり、その、瑛の顔の少女の元へ。その少女は、一つだけ、天井についている、螺旋階段の、上にある窓を指差した。
音は存在しないはずなのに、声が聴こえた。
『あそこの窓から、外に出られます。ここは、貴方のようなモノがいるべき場所ではありません。貴方のいるべき場所は、私のこの姿の何処かに、示してあるはず。まだ、戻れないかもしれません。肉体が壊れていれば、魂を、身体の中に、入れることはできません。ですが時が来れば…』
そこまで言った時、この場所の空気が変わった。はじめの柔らかな雰囲気が、突然、暗く重いものに変わる。毒々しい、禍々しい、赤色の場所に、変わる。人々も、干からびた、恐ろしい形のものになっていった。
少女は消え去った。
僕は、右上の窓を目指し、中央の螺旋階段を、上り始めた。
瑛。待っていて。今、そっちに戻るよ。
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