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まぁいつもこんな感じ。
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「また派手に怒られてたね~
あれってそんな怒ること?
あの人、いつか頭の血管切れるよ」
給湯室に向かうと、くつくつという笑いと共に、ちょっと小馬鹿にした声が飛んできた。
それが同期の明海さんだとわかると、俺はほっと胸をなでおろしてため息をついた。
「そういう事言わない方がいいって、
聞こえるよ」
たしなめるような困った顔を浮かべながら、内心『いいぞもっと言え』なんて思ったのは秘密だ。
「だって毎回あれはないわ…
桜庭桜庭って…なんであの人、君にだけあんな厳しいわけ?」
そう明海さんに言われてから、
ふと考え込んだ。
その考え事は、
俺が珈琲を口にし、給湯室を出て、
今日は残業してやるまいと再びデスクワークに励みながらも、
しつこく頭の中を迷走していた。
なぜ、あの先輩が、
俺にばかり強く当たるのか、だって?
それは俺にミスが多くて、完全に目をつけられているからであって、
まぁそれ以外の何物でもないわけで。
大体あの人は、女性社員にも男と同じように厳しいのだ。
そんなに俺ばかり言われてるか?
…名前はいじられるけども。
「……わからない」
俺がポツリと呟くと、
途端デスクにぬっと影が現れた。
「何がわからないんだ?」
「わっ! き、桐嶋さん!!」
振り向くと、いつもの仏頂面がまっすぐ俺を見下ろしている。
背後から突然現れるんじゃねーよ心臓止まるかと思ったよ。
俺はバクバクと波打つ鼓動を深呼吸で落ち着かせると、「いえ、何でもありません」と冷静に返し、再びキーボードを叩き始めた。
「お前やっぱ効率悪ぃな」
うるさいよ。
「すいません。
あ、あの、何か用事があるんじゃ…」
「あぁ。
お前、それ終わったらちょっと来い」
それだけ言って、桐嶋さんは俺のデスクを去っていった。
あの言い方。あの目配せ。
…嫌な予感しかしない。
俺って先月も呼び出し食らってなかったか? そのせいで友人との会食がキャンセルになった覚えがある。
周りの社員が、また同情するようにこちらを見てきたが、俺はそれにすらイライラしていた。
明海さんの言う通りだ。
何をしたのか知らないが、アイツは俺にばかり突っかかってくる。
とはいえ。
俺がやつに気に入らない要素も、山程ある。
いつもニコニコヘラヘラしていること。
タイピングが遅いこと。
割とプライベートを優先したがること。
見せかけの爽やかさゆえに、女の子にもてはやされること。
…言い出したらきりがないぞ。
きりがないけど、向こうだって理不尽だ。
わからないなら聞けという。聞きに行けば、なぜわからないとキレる。
俺の仕事を手伝うなと言うが、いざ手をつけなければまた怒る。
理不尽とは会社の代名詞だな。
そんな事を思いながら、
俺は出来れば終わらせたくない目の前の仕事を、バレない程度にたらたら取り組むことに、全力を尽くしていた。
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