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お早うございます
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「おはようございます!」
出勤時間も予定ぴったりだ。
今日の俺は、いつもに増して爽やかになれそうな予感。
心なしか挨拶する声も弾んでいる。
「ちょっとちょっと桜庭君」
そんな俺とは対照的に、話しかけてきた明美さんは険しい表情だった。
促されて耳を貸すと、小声で話すには少々大きすぎる声が飛び込んできた。
「今日ね、桐嶋さんの機嫌が最っ悪なの、もう朝から大変なんだから! 君何かした…!?」
「何かしたって、俺今来たばかりなんだけど…」
俺がにこにこしながら返すと、明美さんは「そうよねぇ」と言いつつ、まだ怪訝そうな顔をしている。
桐嶋がもう来てるだと。
いつもより20分早いぞ。
それにしても、入社早々の俺を疑うってのは、なかなか鋭いぞこの人。
「あの人の機嫌が悪いなんて、いつものことだよ。まぁ、ちょっと俺行ってくるね」
「えっ、えっ、さ、桜庭君?!
大丈夫なの…!?」
「平気平気〜」
大方昨夜のことを気にしてるんだろう。
ま、当然といえば当然だな。
夜中にあんなメール送り付けてきたぐらいなんだから、
まともに睡眠もとれてないんだろうな。
自分からずかずかと先輩のデスクに向かうなんて、昨日の俺じゃ出来なかったことだ。
ちょっと俺、調子乗りすぎだな。
乗りすぎだけど、楽しすぎる。
「おはようございます、桐嶋さん」
「………」
目の下にどんよりと隈を作った桐嶋さんが、ぎごちなく顔を上げる。
恨めしそうな目で俺を見上げてくるだけで、特に文句を言うことはない。
まぁそれも当然なんだけど。
俺と桐嶋さん以外に、昨夜の事情を知る人なんて居ないんだから。
「……はよ」
渋々といった態度で挨拶を返してくる。
けどこの目は、とっとと失せろと言っているようだ。
「桐嶋さん、今日お昼御一緒しませんか?」
「却下だ」
「残念だなぁ~
じゃあまたの機会に」
クスッと笑いかけて、
自分のデスクに戻ると、明美さんがぽかんと口を開けていた。
「ねぇ。ほんと、何があったの?」
「さーぁ…何があったんだろうね」
嬉々とした様子で仕事にかかり始める俺に、明美さんは尚も信じられないといった顔をしていた。
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