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胸か尻だったら?尻ですね。
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「それはね、桜庭君。
ズバリ、欲求不満よ」
「よ、欲求不満…?」
給湯室。
コーヒーを片手にきっぱり言い張る明美さんに、俺はこてんと首を傾げた。
最近妙にイライラしたり、突然気分が下がったりと、いわゆる情緒不安定な状態が続くことを彼女に相談してみたところ、
たいして間を置かずに、
思いもしない答えが返ってきた。
「そう! 桜庭君、今彼女とか居ないの?」
「んー居ないね…ここ2ヶ月程。
というか最近はまず、社員以外の女の子と関わることがないしなー…」
社外でわざわざ女の子と巡り会う機会といえば…合コンとか。
良くあるし誘われるけど、俺はあまり得意じゃない。
男達との壮絶なバトル。
回りくどい駆け引きに複雑な心理戦、
あの、たいして面白くない話で盛り上がらなきゃいけない雰囲気。
あんな場所…無理やり話を振るくらいなら、俺は壁の飾りを決め込んで過ごしたい。
それ程苦手だ。
「でもって、社内以外って言っても、
そもそも出会い目的で女の子と話すとかごめんなんだよね…」
「へぇー意外と真面目!
…っていうかぁ、うちは別に、社内恋愛OKなんだぞっ!」
意味ありげにウインクして肩を寄せてくる明美さんに、
俺は焦りながら「じょ、冗談だよね」と目を逸らした。
「ぁは、冗談に決まってるじゃん。
私気になってる人居るしねー!」
そう言ってからからと笑い飛ばすのを聞く限り、本当に洒落だったようだから安心した。
明美さんは女性社員の中でも、一番会話しやすい友達だと認識していたからだ。
正直二人で遊びに行ったりしたこともあるのだが、俺の中でこの人は、本当にただの友達、あるいは同僚であった。
「気になってる人って…同期? 先輩?」
「ふふん、それは秘密。
…桜庭君はそういう人、全然居ないわけ?」
いやぁ。
まるっきし居ないな。
いや、この言い方だと変に失礼なニュアンスを含むけどさ、
魅力的な人が居ないわけじゃないよ。
うちの営業部は美人の集まりだってもっぱらの評判だし。
取引の場ではルックスが良い方が有利だって事実もあるし、仕事面でも有効活y……超戦力になってるし。
…だけど。いざ恋愛対象として見るとなると…
どうしても違和感があるというか。
「…桜庭君て、どんな子がタイプなんだっけ?」
「んー…清楚系で、明るくてアクティブな…
笑顔の素敵な子?」
何の汚れもなさそうな子を、無理やり汚すとかちょっと興奮するよね。
…や、大丈夫犯罪は起こさない警察沙汰は勘弁してくださいマジで。
ゴミを見るような目で携帯画面を覗かないでくださいお願いします。
「ぁは、なんか男子中高生みたいな好みだね」
なんだと。
「で、でもあれだよ、
大人の魅力も好きだよ!
こう、年上の色気的な…」
いつも落ち着いている人の、余裕を無くさせるのはなんか意外性に燃える。
…やめて。軽蔑しないでください。
「…なんか桜庭君てさ。
案外、下心全開よね~」
「えっ、うそ」
「あっはは、
ほんとに男子中高生じゃ~ん
女の子に夢見すぎ~
可愛いけど爽やか失格だぞ~」
むむむ…
そんな、俺が童貞なんてもってのほか、彼女が居たことすらないでしょ。みたいな言い方しないでほしい。
よくよく思い返せば、今まで交際するにあたって、真面目にタイプとか考えたことはなかったのだ。
今のはちょっと、咄嗟に男の本能に頼ってしまっただけなのだ。
「ま、何でもいいけど恋愛することだって~
折角の20代、一緒に楽しもうよ~
例え片想いでも楽しいよ♡」
憧れの人に片想い、だって?
何それ、自分だって女子中高生みたいな恋愛の楽しみ方してるくせに。
「…いやもう、俺はあれだ。
色々とお手頃な感じの子がいい」
キリッと潔く言い切ると、明美さんは軽く吹き出した。
ああコーヒーが。
「桜庭君崩壊してるぜー……
それに。
自分の遥か上に居て、なかなか手に入れられないって人の方が燃えない?」
ふふっと笑った明美さんは、
本当に恋する乙女みたいな目をしていて、
そんなこの人が、ちょっと羨ましくなった。
自分の遥か上に居て…
なかなか手に入らないような…
そんな人に、恋をするものか?
「あとは…
普段すっごいクールで冷たい人にさ、甘い声で『好きだ…』って囁かれたらどうよ? もう死ぬよね!ね!」
「いやそれ、男の俺に言われても…
っていうか、少女漫画の読み過ぎじゃ…」
「はぁん?」
「…ナニモアリマセン」
やっぱり女の人って、漫画みたいな展開に憧れるんだなぁ。
それに、こんなぶっ飛んだ明美さんのすっ飛んだ恋心なんて(ひでぇ)、
俺には到底理解出来ない。
ましてや恋人が色々な点で自分より勝っているなんて、惨めで耐えられない。
この俺が、ある日突然、誰もが惚れるようなスーパーガイにならない限りは、そこそこ可愛くて、選ぶに無難な子をご所望します。
困ったことに最近じゃ、
そんな欲もなくなって来ている。
ということは… … …
ーーーーーーーーーーーーーーー
「もう俺、この年で女の子に興味なくなっちゃったのかなぁ…」
「…えっ…」
「や。そういうコトじゃなくて。」
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