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『そういう目』でみてる
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うちの会社のトイレは寒い。
この時期にはもう既に、
水に触れるのを渋るほどひんやりと張り詰めている。
特に真冬ともなれば冷蔵庫のようで、誰も近づかなくなる。
そんな辛い現状がある。
誰か改善してくれ。マジで。
「あー寒。…脱ぎたくないです」
「ふざけんな脱げ」
俺としては別にシャツくらい明日洗って返せばいいのに、とか思ってしまうのだが、
それはこの普段より滑らかな布を手放すのが惜しいからなのかもしれない…
「つーか、どおりで窮屈なわけだな。
体つきまで貧相とか…可哀想な奴」
「なっ、そんな変わりませんし!
…それに俺の方は、何とも思いませんでしたけど?」
本当に哀れむような目でこちらを見る桐嶋さんに、ムッとして言い返す。
そういえば若干少し大きいような…とか思ったのは、気のせいだ、絶対。
面倒くさそうにボタンを外していく桐嶋さん。
それを横目に俺もシュルシュルとネクタイを解いていたのだが、
俺のシャツの前が全開にされたところで、
思わずぎょっとしてしまった。
「ちょ…インナー着てないんですか?」
「うるせぇ、時間無かったんだよ。
…じろじろ見てんな」
まさかの、裸シャツ…
俺の生地が硬いらしいワイシャツが、
ダイレクトに桐嶋さんの肌に…
何故だ。
見るなと言われたのに、一向に目が離せない。
「…さ、桜庭…?」
急に黙り込む俺に、桐嶋さんの口元がピクリと引き攣った。
そりゃ誰でも凝視されたら居心地は悪かろうが…
警戒して壁際に後ずさる姿は、
この人が酷く焦っていたあの夜を彷彿とさせる。
乳首透けてるし…やーらし
…なんて当然のように変態思考繰り広げてるけど、男の胸の突起をいやらしいとか思ったのは初めてだ。
ほんと…どうかしてる。
それに胸だけじゃない。肩幅なんかも、生地が食い込んでうっすらと透けている。
やはりこう見ると、
悔しいが、本当に俺のシャツは若干小さいようだった。
「ぉ、おい。なんかお前、
最近おかしいぞ…」
「おかしい…何がです?」
「ちょ、馬鹿来るなッ…
それ以上近づいたら許さねぇからな」
何ビビってるんだよこの人は。
でも、普段の余裕綽々な態度を取られるより、よっぽど気分がいい。
「俺に何か怖いことでも?」
「…誰が怖がってるだと」
いや怖がってるとは言ってない。
つーか…
そんなトイレの隅に追いやられながら言う台詞じゃないと思いますけど。
むきになってガシッと掴みかかってきた手を、逆に捕えてやる。
するとまた、いがみ合いには滅法強いこの男が、ビクッと肩を揺らした。
「あ な た が。
…ですけど?」
「ッ…お前なぁ!
つか早く俺のシャツを脱げ!」
もう少し俺に怯える桐嶋さんを虐めてやろうかと思ったところで、
残念なことに、
誰かが廊下を歩いてくるのが聞こえた。
「どうやら、社員Aが用を足しに来やがりましたね」
「…そうか…」
俺と2人きりにされるのがそんなに嫌なのか。ホッと胸をなで下ろす桐嶋さんだったが、
次の瞬間には、完全にその顔から血の気が失われていた。
それも当然、
大の大人2人が半裸状態でトイレの中で取っ組みあってる。なんて…
いくらここが男性用トイレだろうと、
正常なことではないだろう。
…どう考えても。
「やばいっすね…
桐嶋さん、こっち!!」
俺は固まる桐嶋さんの腕を引くと、
社員Aがトイレに立ち入る寸前に、
背後の個室に駆け込んだのだった。
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「おい、何なんだこの状況は」
「しーっ! 静かに」
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