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どんと らいく
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~桐嶋side~
桜庭樹。…
女みたいな名前しやがって、末恐ろしい奴だ。
上司(男)を好きになっといて、あんなに堂々として気持ちをぶつけて来る奴は初めて見た。
そもそも、ホモに好かれた事なんてないし、
いわゆる所の『同性愛者』には、初めて出会った。
…そして何より。
奴は本当に同性愛者なのだろうか…?
数ヶ月前まで彼女が居たとは聞いているし、
職場の女子とも普通に仲良くやっているようだし、やり取りを見ていても、ムカつく程の『男女』感が出ている。
俺は好きでもない奴にわざわざ優しくするのはごめんだから、
桜庭の態度には理解しかねるものがある。
そういえば
俺が桜庭樹の嫌いな理由その1は、
あの八方美人な態度にあった。
とんだ腹黒の癖に、分け隔てなく腰低く接するあの優男ぶりに腹が立つ。
何よりその黒い一面に、社内の誰一人として気づかないのがまた癪だ。
そんな好かれ放題人気者のあいつが、
突然俺に気があるとか言い出したら…
そりゃビビるだろ。
「なんなんだよ、好きって……」
叩き出すタイピング音が耳から遠のいて、その意識はすぐ別の方向へ向かう。
病み上がりだからか…
全く手元に集中出来ない日だ。
誤字脱字が多いなんて、
そんな桜庭みたいなことが俺に許される筈がない。しっかりしやがれ桐嶋寛人。
…それもこれも、全部桜庭のせいだな。
あいつが俺に妙なことばかりするから、こっちまでおかしくなったんだ。
胃が痛い。ストレスだ。
奴の存在がストレスだ。
あいつが、本当に嫌いだ。
嫌いだ 嫌いだ 嫌いだ 嫌いだ…
「… 桐嶋さん。
大丈夫ですか?」
「…はっ?」
顔を上げると、小柄な丸い目をした女性社員が、不思議そうに俺を眺めていた。
明海友梨…
またあいつに関連付けられるのが現れたもんだ。
「…大丈夫って何が?
俺は至って普通だが?」
「いや、桜庭君に体調崩されてたって聞いたので…なんか顔、すっごく赤いですよ?」
「まさか。
赤くなんかなってない。熱もとっくに引いたぞ」
「そうなんですか?
いやあの、桜庭君が…」
またその名前か…!
「桜庭桜庭うるさい。早く仕事に戻れ」
また不思議そうな顔をして、「はぁ」と生返事をしてから、自分のデスクに帰って行く明海。
追い返すような態度で悪いが、
今の俺はかなり情緒不安定かつ、
桜庭恐怖症である。
出来れば暫く奴の名は聞きたくないのだ、禁句なのだ。
色々と蘇ってくるものが多過ぎて頭が混乱する。…
いつまでも人の頭の中に居座られるのはごめんだ。
さっさとこの脳内から抹殺してやる。…
「… … …くそッ」
この顔が若干火照るのは
落ち着くことのない桜庭への苛立ちのせいなのか、
暖房の効いた部屋の空調のせいなのか、
実は風邪の名残で微熱があるせいなのか…
それ以外の理由なんて、
俺は知らないぞ。
ーーーーーーーーーーーーーー
今日の俺はまた一層機嫌が悪いと、
後に噂されていたのは、
言うまでもない。
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