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桐嶋さんに注意されてセットした通り、
アラームは7時きっかりに鳴った。
起床時刻は問題なし。
だが、
この俺の朝で順調だったのは、
たったそこまでだった。
「… … 嘘だろ…」
身体が鉛のように重くて、
頭がぼんやりして、布団から見上げた天井の電球が、二重にも三重にもあるように思えた。
確認するために瞬きをするのもしんどかった。
軽く酔って寝ただけだというのに、身体が信じられない程の疲労を抱えているのだ。
そう。
俺は今、信じたくない事実に直面していた。
これはただの二日酔いなんかじゃないし、そもそも昨日の酎ハイだけじゃ、体調を損ねるような飲み方はしてない。
つまり、ウイルスだ。
「…何これ。
絶対熱あるんだけど…」
あの桐嶋さんが熱に浮かされたのは二日前…
彼の近くにいて、密着したり接吻したり色々あった俺が、
強烈な病原菌をダイレクトに貰ってしまったのはまぁ確実というか当たり前というか。
移って寝込むのもわかりますよ、覚悟してましたよ。現に今40度くらい有りそうだし。
…だけど…!!
なんで今日ッ!?!?
衝動的に携帯を取った俺は、
気がつけば数秒後、ある番号に電話をかけていた。
しばらく経って奇跡的に繋がると、
俺の口先はもう落ち着くことを知らなかった。
「…ぁ、もしもし!? 桐嶋さん!!
…今大丈夫ですか!?」
『……誰だよ、殺すぞ』
携帯越しに、
物凄い起き抜け感のある掠れ声が聞こえた。
応対早々殺そうとしてくるなんて、相当悪質な寝ぼけ方してるなこの人。
「桜庭樹からの熱いモーニングコールですけど」
なんて言ってみるが、この人は多分まだ後短くても1時間は寝てられるんだぞ。
自分の都合で上司を起こすなんて、
なんて最低な部下だ。
きっと俺が桐嶋さんの立場だったら、睡眠妨害罪で即刻訴えるだろう。
『…切る。』
「ちょ、ちょっと待って!!
大変なんです、あの……
熱がえーと…39.4℃ある時って、会社行ってもいいですか…?」
ピピッと電子音を発した体温計を見て、あやふやだがその通りの数字を読み上げた。
『いやいや、
来んな大人しく寝てろ。
……まさか、俺の移ったのか』
「…みたいです」
桐嶋さんが小声で『あんなことするからだろ』と呟いたのは、聞こえなかったことにしよう。
『…つーかお前、休みの連絡なら部長の出社時間待ってそっちに入れろよな。
早過ぎなんだよ、眠いわ馬鹿』
流石にこの時間でのモーニングコールは怒ったか。どうも機嫌の悪い桐嶋さんに、
俺は落ち込みながら続けた。
「だって、今日仕事の後飲みに行くって約束したじゃないですか…」
『それも、その熱じゃ無理だろ…
いいから今日は、家でゆっくり休め』
呆れ返ったような言葉がため息混じりに返されると、俺は跳ね上がって思わず両手で携帯を握りしめた。
「ぃ、嫌だ…嫌です、行きたいです!
俺桐嶋さんと飲みたい!」
『うるせぇ、子供かお前は!
もはや仕事の方気にしてねぇだろ…
そもそも、熱ある状態でアルコール煽るとか、生死に関わるんですけど』
昨夜狭い部屋で、1人舞い上がって小躍りしてたのが馬鹿みたいじゃないか。
それに、色々決めてたんだぞ。
明日は桐嶋さんの話とやらも愚痴もいっぱい聞いてやるんだって、覚悟してた。
俺がこの人を和ませてやれる存在になるんだって、そこからだって決心してたんだ。
…だから、
まずは飲みの席での気配りから段階を踏もうとしてたのに。
……なに? 最段階? セッ×ス
「嫌だ嫌だ嫌だ!
桐嶋さんは、俺とじゃ嫌なんですか?
上司と飲みたがる部下って珍しいでしょ?
絡み酒も愚痴り酒もOKですよ?
すごく楽しみにしてたのに…
そんなに俺のことが嫌いですか、酷いですッ」
まぁ結局は、俺が勝手に発熱したのが全部悪いんだけどな。
『…あー。なんかもう面倒くせぇなお前』
「知ってますッ!!
わかります俺ウザイと思います、
でも…マジで嬉しかっただけにほんと…ッ」
このショックは例え難いものだったというわけだ。俺可哀相。
その後も俺がギャーギャーうるさいので、
桐嶋さんは自分の忍耐と、
俺の自宅周辺の騒音公害を心配したんだろう。
しばらくすると、『おいこら聞け』と喚き立てる俺の注意を引いてきた。
そして、渋々といった応対の様子で、
俺が思ってもみなかった事を提案してくれたのだった。
『…だったら……
俺が直接、お前ん家行ってやってもいーけど』
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