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思わせぶりか天然か
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「…そういう事だから、
頼んだぞ」
「ぁー…はぃ」
…どういう事だ?(おい)
高熱と桐嶋さんに会えた喜びでもはや頭が茹だち放題の俺に、このタイミングで仕事の話をするのは間違っていると思う。
大いに間違っている。
現に、その内容を一切理解出来なかったじゃないか。
…良く聞いてなかった所もあるが。
「おい。ちゃんとわかってんだろうな…
もしかして、今言うべきじゃなかったか」
やっとそれに気付いたか。
俺はマスクの中で苦しい息を吐きつつ、
隣に座る桐嶋さんを見上げた。
難しい顔で資料に目を通す桐嶋さん。
かっちり着込まれた上着は無くて、ネクタイも緩みきっている。
何度か見たこの姿はやはり圧倒的色気で、どうも目に毒だ。
なんかこう…無性に触りたくなるよな。
「ねぇ桐嶋さん…手握って」
気づけば、思ったことを口に出していた。
しかし、なんて儚い願いだろう。
彼に伸ばした手は、おそらくあと数秒でひっぱたかれるか『嫌だ』の一語で拒絶されるかなんだから。
それをわかってても、
試したくなるのが俺である。
「は…はぁ? 子供じゃねぇんだから…」
一瞬動揺した顔を見せて、すぐに紙束へと目を逸らされる。
やはり相手がこの男となれば、手を繋ぐことさえ、一筋縄ではいかないか。
そう思った矢先、
俺の手がギュッと冷たくて固いものに包まれた。
「…えっ」
一連は終始無言。なんの前触れもなかった。
だが確かに、
桐嶋さんは左に持った資料から目を離さないまま、右手で俺の手を握っていたのだ。
戸惑いのあまり、ジンジンと頭痛が酷くなった気がした。
「違うからな、
これただのカイロ代わりだから。
ぁ…あーあったけぇ。
初めてお前が便利に思うわ」
初めてといえば、
俺も今朝初めてわかったことだが、
この人は照れると若干口数が増える。
でもって若干早口になるのだ。
嘘だろ。…
何それ、何で断らないわけ。
俺が病気で、気遣ってくれてるから?
大嫌いでいつもホモ呼ばわりしてる相手にも、
弱ってたらこんなことしてくれるの?
考えれば考えるほど、どうにもやるせない気持ちになる。
「はは…お優しいんですね、
拒否られると思ったのに」
「気まぐれだ、気まぐれ…
ぉ、俺は5人兄弟の長男だったからな。
…昔を思い出したって所だ」
「ふぅーん……え!!」
思わぬ言葉に、ガバッと布団から起き上がってしまった。
…マジ!? 5人!? 多っ!!
勝手に一人っ子の印象を持っていた俺にとって、その発言はなかなか衝撃的なものだったのだ。
いやいや、要領良くて世渡り上手な感じとか、完全に一人っ子気質だろ。
長男とか意外過ぎね?
その位置づけには驚いたが、
俺は同時に、ひそかにほくそ笑んでいた。
「そっか…
じゃあ、甘えられ慣れてるわけだ?」
「子供の頃の話だよッ…
それに、んな優しい兄でもなかっ……!!」
勢いよく掛け布団を剥ぐと、
空いているもう片方の手で、桐嶋さんの腕を掴み、力任せに引き寄せる。
バランスを崩した桐嶋さんは思い切り俺の足を踏みつけて、
横になった俺に覆い被さるような体制になった。
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