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我慢ならないんです2
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「てめぇ、言わせておけば…ッ!!」
熱でしんどいのなんかすっかり吹き飛んでいて、
桐嶋さんの怖い顔を見上げると、嘲笑混じりの言葉があまりにもさらりと口をついた。
「ああもう落ち着いてくださいよ、
息切れてるじゃないですか。
まったく…
俺みたいな部下相手に必死になっちゃって…桐嶋さん、かーわいい」
あれ…
俺ってこんな生意気だったっけ。…
「ていうか馬鹿ですよね~!
目ぇ付けられてんのわかってて、俺ん家来たくせに…
何もなく済むと思いました? 逆に。
それとも…
熱あるからって油断してましたか?
…なにそれ、考え甘っ…
ほんと、食べちゃいたいくらい可愛いですね」
くつくつと笑いながら言う俺に、
桐嶋さんは言葉にもならないようなショックを受けていた。
俺みたいな仕事も出来ない年下に馬鹿にされるのって、どんな屈辱だろう。
脅されて翻弄されて、
いつかストレス性胃潰瘍にでもなっちゃうんじゃないの。
そんな俺の態度に、
桐嶋さんは今までにないような癇癪をぶつけてきた。
「ふっざけんな!!
俺はお前が普通に接しろって言うから飲みに誘ったし、用があるから家に来ただけだ!
なんだそれ…
だったらお前は、好きとかなんとか調子のいい事ばかり言って…
結局は俺に恥かかせたいだけなんだろうが!!!!」
泣きそうな顔をした桐嶋さんは、
寝転んだ俺に乗りかかったまま、ぐっと歯を食いしばっている。
その後、突然表情が無くなったのを見て、
俺はサッと血の気が引くのを覚えた。
…やばい。
色々やり過ぎた。
拒否されてイライラして、自分も相手も嫌になって、癪だったから意地の悪い事ばかりが口走っただけ…
こんなクソみたいな長ったらしい芝居を繰り広げても、本当に言いたい事は見つからない。
俺は一体、どうしたいんだよ …
「…もういい…疲れた。
帰る」
「ぇ…ちょ、桐嶋さ…」
すくっと立ち上がり、
てきとうに上着を羽織り出す。
その顔はあんまりにも冷たくて、前のように俺に嫌悪を向ける目ですらなかった。
会社で俺を嘲笑った時とも比べられない。
この人のこんな顔は、初めて見た。
「桐嶋さん!!
違うんです、待ってください」
無理やり身体を立ち上がらせて掴んだ腕は、あっけなく振り払われてしまう。
苦しくて息が詰まって、過呼吸になりそうな喉が変な音を立てた。
「桐嶋、さ…ッ」
怖い…
始まってすらないものが、
こんな形で終わらされてしまうのが。
「酒は好きにしろよ。
…悪かったな。
お前の期待に沿った事もしてやれねぇ奴が来て」
「ぁ…待って!!」
くそ、こんな時に限って熱で頭がくらくらする。
上手く動けず床に横たわると、
目の前に薬やら酒缶やらが入ったビニール袋があった。
それを見て、思わずハッとした。
酒だけじゃない…。
薬も、冷却シートも、風邪の時手軽に口に出来るようなものも、全部揃えて買ってある。
嫌いな部下のために、
こんなに色々尽くしてくれるような上司に、
俺はこれ以上、どんな無茶なことを求めたっていうんだ。
「……桐嶋さん…」
パタンと音を立てて、
静かに扉は閉まった。
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