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紆余曲折すらしない。
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『なんで喧嘩になったの?』
「え?! …だから、色々とあって…」
電話を切るなとは言われたものの、やたらと詮索してくる明海さん。
きっと心配してくれてるんだろうけど、
流石に彼女に俺と桐嶋さんの全てを話すわけにはいかない。
『酷いことって、何言ったの?』
「…よ、良く覚えてないかな〜ぁ」
はぐらかす俺に、『ほんとにぃ~?』とまた探りを入れるような声がのしかかる。
…嘘です、記憶バッチリです。
俺に目付けられてるとか軽率だとか油断し過ぎだとか、とにもかくにもクソ生意気な文句を吐き捨てました。
思い出すだけで後悔の念に駆られる俺。
感情がふつふつと湧き溢れて、
勢いで空になったスチール缶をぐしゃっと握りつぶせた程に、自分が憎い。
『… …まぁいいわ。桜庭君…
私が何とかしてあげるから! 私に任せなさい…ね!』
「ぇ… えっ?」
あまりにも徒おろそかな言葉。
思わず手放してしまった潰れた缶が、床の上を跳ね、廊下の方にまで転がっていった。
それをポカンと眺めつつ、通話に戻る。
「な、何とかって…」
無理だよ明海さん。
俺は君の何をどう頼りにしたらいいわけ。
俺は男が好きな最低最悪の変態なんだよ。この変態の気持ちが君にはわかるの?
「……何する気?」
『桐嶋さんのことは私に任せな!
このラーメン食べたら即効戻って散々機嫌取った後で、しっかり話つけてあげるから!』
あ、いいな。
ラーメン屋行ってたんだ…
…じゃなくて!!
「いやいや明海さんそんな無茶は…
ていうか、君も苦手意識持ってたよねあの人に。そこはいいの?
話したくないでしょ、別に良いんだよ俺のために精神削らなくても」
酔いも冷めきって、
ダラダラと冷や汗を流す俺。
話ってなに!! 話ってなに!!
俺結局、明海さんに何一つとして打ち明けてないんだけど。
彼女は俺らの全てを知らない、純粋無垢かつピュアっピュアな状態なんですけど。
友人思いで正義感の強い子だとは思ってたけど…ここまで来ればありがた迷惑ってやつだよ。
何故かやる気満々な明海さんに、
寧ろ不安しかない俺である。
『んなのいいから!
黙ってらんないでしょ。
あんのパワハラ上司…よくも桜庭君を酒浸りに…これは重罪だわ』
いや悪い事したの俺なんだけど。
唯一教えた部分を理解してくれてないし。
しかも、
昼から飲んだくれてるのも、自分の勝手な意思行動なんだけど。
…だめだこの子、
突っ込みが追いつかない。
「いやぁ…明海さん、ちょっと落ち着い…」
『桜庭樹ぃ!!!!』
「は、はい…ッ?!」
ああこれは一体誰のせいであったか。…
名前を強く呼ばれる度につい恐縮する癖が付いてしまった。
咄嗟に返事してしまった俺に、明海さんは興奮した声で続ける。
『だから、明日は絶ッッッ対に来てよね。
奢ってあげるから』
「ぉ、おぉ…」
『あともう一つ!!!!』
「な、なに…?!」
『… …知らなかっただろうけどね…
ここの豚骨叉焼麺、超オススメ』
ブツッ…ツーッ…ツーッ…
「……ま じ か」
途端に静寂に包まれる部屋。
半日で再び散らかったその景色を眺めながら、俺はしばらくの間固まったままだった。
眠りも浅く病みや孤独心などのマイナス思考に暮れる半日間だったが、
そうもぐずぐずしている場合じゃないらしい。
一刻も早くこの強烈な風邪を治して会社に行かなければ、俺と桐嶋さんの関係は、
きっと引き裂かれるばかりだ。
…1人の女性社員によって。
ーーーーーーーーーーーーーー
明海さんとは仲も良いし、
信頼してないわけじゃないんだけど…
(ごめん!!
色々と、嫌な予感しかしねーよ…!!!!)
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