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変態による爽やかならぬ朝
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あくる日の朝…
いつになく目覚まし要らずのすっきりとした起床を迎えた俺は、
起き抜けのごろごろリラックスタイムに突入した。
(おはよう世界。おはよう日本。
ああ実に爽やかな朝だ)
心なしか肌の調子も良い気がする。
伸びしながらごろりと寝返りを打つと、
同じ布団の上で、何やら大きくて暖かい物に触れた。
ん? んん? 何だこれは。
固いが滑らかな感触。それに温度が人肌だ。こんな高性能かつ上質な抱き枕、持ってたっけな。いや持ってない。
とすれば、この未確認物体は……!!
「…な、な…っ
なんで!?」
それが人間、まして男の背中、それも良く見知った人物であることを認識すると、
俺は思わず反対側の壁まで後ずさる。
そしてごくりと喉を鳴らした。
どうして俺の部屋で、俺の布団で、
裸の桐嶋寛人が眠っているのだ…!!!!
覚えがない。記憶もない。
酒か? 酒なのか? 一夜の過ちなのか?
からの朝チュンって…そんなベタな展開謎ります?
焦る俺を前に、
やがて目を覚ます桐嶋さん。
「すいません!!
違うんです、多分酔ってたんです…!!
ほんと、何でこんなことに…ははは」
慌てふためく俺を見て、
彼はあの優しい微笑みを浮かべ、
恥じらいながら一言…
「何だよ、覚えてねぇのか?
…昨日はお前と…
あんなに甘い夜を過ごしたってのに…」
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なぁーんてことがあったらなぁぁぁぁ…
…もしも。
今少しでも騙された人が居たのなら、
桐嶋寛人の生態を理解しきれていませんよ。
だってよく考えても見て欲しい。
あの自尊心の塊が、俺にあんな事許してくれます?
ここまで地道に積み上げてきたものを、頭っからぶち壊すような急展開、有り得ます?
ありませんよ、
あって欲しいけど、あるわけがない。
…あるわけがないんだよぉぉぉ!!!!
これは、
桐嶋さんと屋上でキスした日から数えて1、2、3……数日後の朝を迎えた俺の、
都合の良い妄想です。
「くっそぉ…朝が秒でやって来る…
俺さっき寝たばっかじゃね?」
さっきまで夜中の12時を指していた時計は、既におよそ7時間後を示している。
毎日毎日仕事仕事…
誰かさんに会うためだけに1時間かけて車走らせてるようなものだ。
その誰かさんも近頃は、
やれ出張だの部長と打ち合わせだので全然構ってくれねーし…
…それに。
俺の精一杯の気持ちに対し、
桐嶋さんはなかなかはっきりした言葉を返してくれないのだ。
あれ以来…
『考えさせろ』という名のおあずけを喰らった俺は、その言葉に従順に、彼の返事を待ち続けている。
待ち続けて、はや1週間以上が経つのだ。
……遅くね!?
こっちは大人しく待ってんのに!!
そりゃ朝勃ちついでに卑猥な妄想掻き立てたくもなるわ!!
俺なりに数日間悩んでみたが、
もしかすると俺は、あの男にからかわれたのかもしれない。
だって…だって、
よく考えても見て欲しい。(2度目)
初めはドン引きしてた癖に、人をホモ呼ばわりするのが段々楽しくなって来るような人だぞ。
もし本当に遊ばれているだけだとしたら、
あの屋上での一連、最後の合意キスに至ってまで、見事にひと芝居打たれていたことになる。
この俺を出し抜くためだけに…?!
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「……ないな。
流石にそりゃないわ。
…仕事いこ」
馬鹿な憶測を止めた俺は、
もそもそと布団から這い出て、洗面所に向かった。
顔を洗って歯磨き、
でもってうがいは5回がお約束だ。
「ひっどい顔…
肉欲に飢えた肉欲を満たす暇のない哀れな仕事漬けリーマンの顔だ…」
鏡に写った顔を見る限り、
何に疲れているのかは良くわからないが、
今日もまたエナジードリンクのお世話になるしかなさそうだ。
でなければ1日の業務、ましてや超勤だなんて乗り切れるはずがない。
…おわかりの通り、
ここ最近の俺はか な りくたびれている。
目の下にはどんよりと隈が広がり、顔はげっそりと痩けていて最早自分が可哀相だ。
特に今朝の俺は、
桐嶋さんへの欲求が不満していることや妄想が炸裂していることで、
少々己のキャラを保持することもままならなくなっている完全迷子である。
今日こそは返事をくれ。
今日こそはまた残業に付き合ってくれ。
今日こそは少しでも触れさせてくれ。
今日こそは…俺の妄想を実現させてくれ。
そんな壊れたフラストレーションの1日が今、
また始まろうとしている。
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