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私はすべてを知っている
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〜明海side〜
…
桜庭君。
私は入社当時から、ずっと君を見守って来たけれど。
ちょっとぼんやりしてて、でも優しくて爽やかで笑顔の素敵な君を、ずっと慕ってきたけれど。
まさかそんな桜庭君が、
男を好きだなんて思わなかったよ。
・
・
・
「そ…れって…」
『それって、付き合ってんの!?』
という意味での指差しを彼ら交互に向けてみれば、
2人は黙り込んでふいと目を逸らす。
(これ以上は何も喋らないつもりね…)
私は手持ち無沙汰に箸を軽く噛んだ。
桜庭君ばかり気にしているようだけど、
正直何より驚いたのは桐嶋さんだ。
鬼上司が、あんだけ叱り飛ばしていた後輩社員を、好きだなんて。
それに、
さっきのカミングアウトとも言える発言…
本当に付き合ってるんだ。
本当にボーイズがラブしてるんだ。
リアルにそんな嘘みたいな話があるんだ…
気まずそうな2人を前に、
混乱気味の頭の中を少しずつ整理する。
…桜庭君てば、どうやって落としたわけ。
あの切れ長君は我が営業部の高嶺の存在なんだよ。
今までどんな素敵な女の子に告白されても応じなかったんだよ。
何度私が泣いてる女性社員を慰めたと思ってるの。
そんな人が、
なんで男の後輩とデキちゃってるわけ?
やはり、
桐嶋さんの方が、根っからのゲイだったりするんだろうか。
そう思うと、どうにも不安になってしまい、
私は思わず身を乗り出した。
「まさか…
桜庭君が大人しいからって、
無理強いしたりしてませんよね」
じとっと見つめると、
少し驚いた表情の後に、何故か恨めしそうな目で隣を睨む桐嶋さん。
「あぁ…はは、大丈夫。
俺…そこまで大人しくもないんだよ…?」
視線に気づき、
困ったように笑う桜庭君に、
私は得体の知れぬ何かを感じた。
いつもみたいに頬を緩めてるだけなのに、
桜庭君から何か今までに感じたことのないような豪気さが溢れているような。
隣の桐嶋さんですら、無意識のうちに常に圧されているような。
(何か雰囲気が違うな…
恋人だからか?)
この数日間で一体あの子に何があったの。
明海さん超心配…
「んーもしかして…
実は案外、肉食系とか?
一皮剥いたら獣的な」
まぁ
彼に限ってそれはないだろうけど。
私が冗談っぽく尋ねると、
「へっ」と固まる桜庭君。更に隣の桐嶋さんが、ゴフッと飲んでいた水をむせ返していた。
・・・あれ? なんだその反応は。
「…桜庭。もう帰るぞ」
「あっ、ちょ…桐嶋さん!
メニュー持って帰っちゃ駄目ですよ」
突然立ち上がると、
上着を席に掛けたまま、何故かメニューの紙を手によろよろと勘定へ向かう桐嶋さん。
と、それを慌てて追いかける桜庭君。
「…動揺し過ぎでしょ」
そんな彼らを眺めつつ、
私は残りのスープをぐいとひと飲みした。
(…そっか…
そういうことなのか…)
桜庭君の腕を引いて歩いていく桐嶋さんの胸元に、ちらりと紅い痣が見えたことも…
腕を引かれ歩いていく桜庭君の背中が、
もうかつての気弱な社員のそれではないことも…
私は全部気づいちゃったよ。
女ってのは、勘が良いからさ。
「…上司相手に……
生意気だなぁ、桜庭君」
騒然とした店の中…
2人の居なくなったカウンターを見て、呆れ笑いを浮かべる。
向こうの方で、
カランカランと、店の戸が閉まる音がした。
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ヤったら雰囲気変わるって言いますよね...←
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