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昼下がりのこと
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とある港町のとあるギルド。
毎日賑やかに人が行き交い、酒を飲み交わすこの場所。
陽気な喧騒を遠くに聞きながら、カウンター席にもたれて顔を伏せている者が居る。
白い髪はくせ毛がちでふわふわと外に跳ね、長く白い睫毛は雪のように、大きな瞼を飾る。
少し開いた唇は瑞々しく、恥じらうような薄桃色に色付いて、艶かしささえ感じられる。
肌も透き通るほどに白く、華奢な体つきはまるで少女のようだ。
その半開きの唇から漏れるのは……
「ぐごーーー、ぐごーーー」
「相変わらず顔に似合わぬイビキじゃのう」
「寝てても可愛いぜ…つーか目に毒だ」
「恋は盲目ってやつよね。見てごらんなさいよ。ヨダレの水溜りができてるわよ」
「天使が水遊びしてんだぜ」
「レオン、ついに壊れちゃったわね」
「ぐごーーー、ごごごががが」
乙女のような顔に似つかわしくないイビキをかいて寝ているのは、シロ クォーツァイト。れっきとした男性である。
その姿を真近で眺めて悦に浸っているのは、赤毛の青年剣士、レオン アルマンダイン。
それを呆れ顔で見ているのは黒髪の女性、クロエ ベリルと、ギルドマスターのヴァイスだ。
「というか、なんでこんな所でシロは寝てるわけ?」
「なんか最近、一人で夜遅くまで仕事してるみたいだぜ」
「うむ、昨日はネズミ退治をしておったよ」
クロエとレオンは、ギルドマスターの言葉に首を傾げる。白き聖杖にて最強クラスと言われる強さのシロが、ネズミ退治に夜遅くまでかかったというのは、少々引っかかる部分があるらしい。
「ただのネズミでは無かったようじゃよ。また変異体じゃったらしい」
「最近増えてるよな…つーか、なんで一人で?」
「そういえばこの間、家賃が足りなーいっ!って騒いでたわよ」
「……んー?レオン?クロエ?ヴァイスさん?」
「お、起きたのかよ」
クロエ達の声で目を覚ましたらしいシロは、カウンターから体を起こして目を擦っている。
「ごめん、昨日は遅かったから眠くて」
「気にすんなよ。今日はゆっくり寝たらいいんじゃねぇか」
「ごめんね起こしちゃって」
レオンやクロエが気遣うが、シロは少し難しい顔をして、首を横に振る。
「いや、寝てる場合じゃないんだ。仕事しないと…」
「おいおい…フラついてんじゃねえか」
シロは立ち上がろうとしたが、フラついてレオンに倒れかかる。慌ててレオンが支えると、触れたシロの手がやけに熱いことに気がついた。シロをもう一度カウンター席に座らせる。
「姫、体調が優れんのじゃろう?」
「あら!そうなの?シロ」
「大丈夫、大丈夫〜」
「嘘つくなよ。熱があるぞ」
「ん〜、バレてた?」
クロエが慌ててギルドの医務室に向かった。薬を作りに行ったのだろう。
マスターはカウンターの奥から毛布を持ってきて、レオンがその毛布をシロの肩にかけてやった。ごく小さい声で「ありがとう」という声が聞こえた。
「薬持ってきたわ……ってまた寝ちゃったのね」
「ぐごーーー」
「ったく無理し過ぎなんだこいつは……医務室に運ぶぞ」
「うむ、よろしく頼む」
レオンは毛布ごと、そっとシロを横抱きに抱え、医務室へと運んで行く。クロエが何かニヤニヤとしているが、レオンは見ていないふりをする。
医務室は静かで、酒場の喧騒も遠くに聞こえる程度だ。少しはゆっくりと休めるだろう。
「んじゃ、あたしは酒場に戻ってるけど、レオンはどうする?」
「んー……シロの様子見ておく。目ぇ覚ましたら、薬とか飲まさねぇとダメだしな」
「そうね、じゃあよろしくね。
仲良くね。ぐふふ。あ、監視クリスタルとか別に仕込んでないから、何しても大丈b…」
「早く行けよ!」
気色の悪い笑い声を残してクロエが酒場に戻って行った。医務室にはレオンとシロの他には今は誰も居ないらしい。
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