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女心と、温泉の攻防
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トキワは髭を剃り、頭も洗い、腰のタオルを外して体を洗い始めた。何時もの腕、上半身、脚、そして下半身の…。
「え、」
何だか違和感を感じた。モノは付いてる、それはいい。問題はその下、新たな穴の出現だ。信じられない事だが、トキワにとっては久し振りの、あの、素敵な穴があった。
「うわあぁぁぁぁ!」
その、心からの叫びは広々とした男湯を越え、女湯にも響き渡った。
「如何した!」
カイが急いで駆け付ける。洗い場と、湯に浸かっていた男達の視線が全てトキワに集中した。中には腰を浮かせ、何事かとトキワを見、きょろきょろと不安そうに辺りを確認している者も居る。
そんな中、マリンは可憐に微笑んだ。間違いなく、それは魔法の効果だった。自分を侮辱した馬鹿への報復、これからその体で女の気持ちを少しでも味わえばいい、黒い気持ちに突き動かされた、禁断の技だった。
「何だ、騒がしい。」
迷惑そうな声。耳にかかる程の長さの灰色の髪、金と紅のオッドアイ、整った美しい顔立ち。白く抜ける肌が、マリンの競争心を掻き立てる。彼自身も、白く美しい肌の持ち主だが質が違う。
「さあ、唯の酔っ払いでしょ。」
素っ気なく答える。魔法は自分にはかからない、どんなに望んでも女の子にはなれないのだ。今、この胸に宿る気持ち、本当はトキワにかけた技を、完璧な形で自分自身へと浴びせたい。
「そうか、酒か。」
「あ、そうだわ。一緒に飲みましょうよ、私に付き合って、」
湯に浮いたお盆に乗った、空いている盃を渡す。徳利に入った、東国の名産品の酒を注いだ。ここは北国だが、東国との境にある為、この様な珍しい酒が手に入る。
「ああ、この酒は美味い。」
「ふふ、でしょ。美肌効果もあるのよ。」
二人で飲んでいると、腰巻きタオル姿の青い顔をしたトキワを連れたカイがやって来た。
「マリン、何をしたんだ。」
「何の事かしら。何もしてないわよ。ねえ、トキワ?」
「う、うん…。」
無精髭が無いだけで、こうも印象は変わるのか、それとも魔法のショックで気勢を削がれた、そのしおらしい態度の所為か。
淡い金髪が外灯でキラキラと輝き、鎖骨へ冷えた雫を落とす、水色の瞳は憂いを帯びて頼りなく揺れる。長い睫毛が震えた、
「大丈夫、トキワ。」
カイが気遣う。いつもよりも、ずっと優しい声だった。
「チッ、」
マリンは舌打ちした。とんでもないダークホースが居た。自分は見誤ったのだ、あの三十路のろくでなしが滑稽な姿になればいいと思っていたのに。
トキワにあの魔法をかけたのは不味かった。この国では例え魔法で得た体でも子をなせるならば結婚出来る。この容姿、これでは滑稽どころか、引く手数多ではないのか。しかし、魔法を解くには明日以降でなければならない、今のマリンにはこの禁断の技を解くだけの魔力がない。
「何だ、お前の連れだったのか。お前達も飲むか?」
涼しい声音にハッとする。空いたまま伏せられていた杯を、トキワとカイに手渡す白い指先。
「ええ。そうね、今夜は飲みましょう。ほら、カイもトキワも。」
どうせ、今日は何も魔法を使えない。好きなだけ飲んで、美味い料理を食べて、明日早々にトキワの魔法を解いてやろう。マリンはそう決め、青い顔のトキワの杯へ並々と酒を注いだ。
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