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エンディング(4)ーゲーマス4人
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数日後
side:ヤス
シンとはあれっきりだ。
別に大丈夫だと思ってた。
他にも彼氏はいっぱいいる。俺を愛してくれる人は他にもいる。
なのに、心の中はもやもやでいっぱいで、ふとした瞬間にシンのことが浮かんできて、突然悲しくなってきて、なんだかよくわからない。
こんな気持ち初めてだ。どうしてシンにだけ、こんなことを思ってしまうんだろう。
パーティー会場のすみっこで、そんなことをぼーっと考えていた。
今は洋子さんの結婚式の二次会だ。「目の保養になる」とか言って洋子さんは俺とシンを招待してくれた。洋子さんの結婚なんてさほど興味はないけど、シンに会えるかもと思って来てしまった。
…でも来てない!がっかりだ!
「そんな不機嫌な顔しちゃだめだぞ、結婚式なんだから」
隣の席に座っていた村木さんがこっそりと話しかけてきた。
「じゃあ帰っていいですよね」
「いやいや、まだ開始15分だ。だめに決まってるだろ」
「はーっ」
つまらない。とってもつまらない。上手くいかないのはつまらない。
「ヤスもついにシンにフラれたんだな」
村木さんが面白がるように言ってきた。
「…別に」
「そりゃそうだよな。あんなに堂々と浮気されてたら、耐えられなくなるよ」
「はあ」
そんな状況でも好きでいてくれるような人が、俺は欲しいんだ。シンが違うなら仕方ない。俺とシンじゃ合わないってことだ。でも…でも俺は…もやもやする。
シンは浮気しなくて他の男を襲えなんて命令もしなくて、普通に愛してくれる普通の人がいいんだろう。
俺には無理だ!そんなことできない。想像すらできない。
「やあ!ヤスくん」
「透さん」
村木さんと同じく結婚式に参加していた透さんに声をかけられた。
「もう願い事は決まった?」
「願い事?」
「あれ?忘れちゃった?ゲームに買った景品だよ。なんでも1つ願いを叶えてあげるってやつ」
「ああ…」
すっかり忘れていた。
透さんも律儀だなあ。
「ほら、言ってみなよ。ヤスくんの願い。心のままに言っちゃいなよ」
「俺は別に願いなんて…」
心の中にふとシンの顔が浮かんだ。
シンにまた会いたい。
好きになってほしい。愛してほしい。俺を見てほしい。一番に守ってほしい。
でもそのためには…このままじゃだめなんだ。
「…まともな人間」
「ふーん。それがヤスくんの願い事?」
「…え?」
はっとした。無意識のうちに声に出していたみたいだ。
「わかった!じゃあこのあと、俺の家に来てね」
透さんはそう言ってバイキングコーナーへ行ってしまった。
…結局、来てしまった。透さんと村木さんの家。
透さんに連れられて中に入ると、リビングで鴨くんが寝ていた。
「起こさないように、静かにね!」
「透が一番うるさいんだが」
2人の会話を聞きながら、ふと壁を見ると、写真がたくさん飾られていた。村木さんと透さんと鴨くん、3人で写っている写真ばかりだ。
なんだかんだで鴨くんは、ちゃんと愛されてるんじゃないか?
そんなことを心の中で思いながら部屋を抜けると、一般家庭にはおよそ不釣り合いな、コンピュータ室のような場所へ通された。真ん中にはベッドが置いてあり、よくわからない機械に囲まれている。
いつのまにか村木さんはいなくなっていて、部屋の中には俺と透さんだけになっていた。
「透さん、これ、なんですか?」
「君のふるさと」
「…は?」
「まともな人間になりたいんだよね?僕が君の心を再調整してあげるよ。貞操観念とか思いやりとかについて、限りなくゼロに近い値に設定してたから。ついでに過去のトラウマについても消去してあげるよ」
「待って。何を言っているのか…」
「ほら、そこに横になって」
「透さん!どういうこと?」
「作業しながら説明するから、早く」
有無を言わさない口調で命令され、仕方なくベッドに横たわった。
俺の頭に変な機械を取り付けながら、透さんは話を始めた。
「まあ簡単に言うとね、ヤスくんは僕が作った人間なんだよ」
「い、意味がよく……」
ロボット、的な?アンドロイド、的な?
…俺が?
嘘だよね?
「ヤスくんは、あの島でのゲームが始まったときのことを覚えてる?」
「え、えーっと、まあ…」
「僕はそもそも、村木くんが妙な宝探しをするのを妨害するために、ヤスくんとかを送りこんでたよね。宝探ししてる男の子たちをヤスくんたちが襲って、愛で溢れる島にしようっていう」
「ああ、そうでしたね。楽しかったなあ、乱交パーティー」
そういえばそうだった。最初の頃はゲームなんてしてなくて、ただ島にいる男の子と楽しくセックスしていただけだった。あれはあれでよかったな。
「まあヤスくんはそういう感想になるだろうけどさ、普通そんなことに参加してくれるゲイの人なんて、なかなか集めきれないんだよね。だから僕は、この機械を作ったんだ。これは、人間の性格や記憶を書き換える機械だよ」
「そんなもの作れるわけ…」
「僕はなんでもできるんだよ」
透さんはどこか自慢げにそう言い放った。
「それで僕は、道を歩いていたテキトーな人間を誘拐して、この機械を使って性格と記憶を書き換え、乱交パーティーに参加してくれるような人格を持った人間を新たに作り出したんだ。まあ、それがヤスくんなんだけど」
「俺…?」
「ヤスくんの過去の記憶も、今の考え方も、全部僕が設定した偽物なんだ。だから、君の願いを叶えるためには記憶と性格をもう一回書き換えればいいんだよ」
「俺は…俺じゃなかったってこと?俺の本当の過去があるってこと?」
「ヤスくんはヤスくんだよ。生い立ちなんて、些細な話だよね」
「そ、そんな…意味がわからない…」
「そーんなそんな」
透さんは謎の相槌を打つと、なにやらキーボードをたたきはじめた。
「今の君が理解できなくても構わないよ。どうせここで話した記憶は消す予定だから。…あ、シンくんに会った時に違和感が生まれないように記憶の消し方も工夫しないとなぁ」
どうしよう。透さんの話は未だに信じられない。でもこのままだと、なんだか大変なことが起きてしまう気がする。…いや、すでに起きているのか?
「でも驚いたよ。僕の設定では、ヤスくんが自分を変えたいなんて思うはずなかったんだけど。考え方って、過去の記憶のみから決まるわけじゃないんだね」
「シンと関わって、考え方が変わったってこと?」
「あはは!愛の力だね。あははは!」
透さんは馬鹿にしたように笑っている。
そしてキーボードの1つを大きくパンっと押し、俺に向き直った。
「それじゃ、今のヤスくんさようなら」
「えっ?!ちょっと、こんな…急に…」
意識が遠ざかっていく。
これは罰なんだろうか。
人の気持ちを考えられなかった罰…。
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