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超能力編〜ルール説明〜
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次に気がついたのは、しばらく経ってからのこと。
「知真!やっと起きた…大丈夫?」
はっと目を開くとすぐ近くに尚ちゃんの心配そうな顔があった。幸せな気分で起き上がろうとして、すぐ異変に気づいた。
「え…尚ちゃん…?」
「どうしたの?具合悪い?…もしかして、この場所、どこかわかる?」
「わ…かんない…」
僕と尚ちゃんは全く見たことのない部屋にいた。ベッドやシャワールームがあって、宿泊できそうにも見える。いったい誰に連れてこられたんだろう。
でも、今気になってるのはそのことじゃない。
「あっ、あの…尚ちゃん!」
「ん?」
「尚ちゃん今…何考えてるの?」
「えっ?とりあえず、知真が無事でよかったなって…」
「そ、そっか…」
尚ちゃんは不思議そうに僕を見ている。どうしてそんな顔をしてるのかわからない。全然わからない。
僕は尚ちゃんの考えていることが見えなくなってしまっていた。
「どうしたの?なんだか様子が変だね」
「う、ううん。なんでもない。尚ちゃんも気づいたらここにいたの?」
「うん。知真が大丈夫なら、部屋の外を見に行ってみない?こんなとこ、早く出たいし」
「そ、そうだね」
きっと、何かのショックで僕の超能力は一時的に使えなくなっているんだろう。そんなことより今は、ここから出ることの方が大事だ。教室での出来事も気になる。
部屋の外に出ると、長い廊下が続いていて、似たような部屋が他にもあるようだった。
そして2人で廊下を歩いていくと、曲がり角のところで1人の女の子に出会った。
長い髪の毛をポニーテールにしていて、可愛い雰囲気の女の子だ。…やっぱり、何を考えてるのかは見えない。
「あ、まだ他にも人がいたんだ!探してよかった〜」
「…他にも?」
ということは僕たち以外にもここに連れてこられた人がいるってことか。
「うん。他の人たちは、下の階の広間に集まってるんだ。あ、それで、わたし、灯野まもりっていいます!あなたたちは?」
危険な状況にいるかもしれないのに、まもりちゃんは明るく自己紹介をしてきた。
「僕は内藤知真。で、こっちが…」
「水川尚武です。知真とは恋人同士」
「え」
そ、それ言うの?尚ちゃん?!
「ええっ!恋人かぁ…」
まもりちゃんはまじまじと僕たちを見ている。どう思ったんだろう。心が見えないのが本当にもどかしい。
「…うん。まもり的には、あり!」
「なにそれ?どういうこと?」
「それより下に行こう!みんな集まってるから」
「あ、うん…」
僕はこっそり尚ちゃんを見た。なんだか涼しい顔をしている。
この先ずっと、こんなオープンな感じでいくんだろうか?尚ちゃんは、他人の目とか気にならないのかなあ…。
まもりちゃんに連れられて大広間に行くと、思ったよりたくさんの人が集まっていた。
「新しく2人の仲間が加わったよー!」
まもりちゃんが手を振りながら歩くのについていく。
「まだ人がいたんだね。連れてきてくれてありがとう」
美少年、といった感じの見た目の男の子がまもりちゃんに声をかけた。
「えへへ、それほどでも〜」
「あのー、まもりちゃん。どうしてここに集まってるの?早く外に出た方がいいんじゃ?」
「えっと、それがね、この建物、出口が見当たらないの」
「…え?」
「ぐるっと歩いてみたけど、壁しかないんだ。窓も1つもないし。人の通れない小さな換気扇があるだけ」
「え…どういうこと?それじゃ僕たち、どうやってここに入ってきたの?」
「いやー、全然わかんなくて……わっ?!」
突然、部屋の電気が全て消えた。そして闇の中に、知らない人の顔が浮かび上がってきた。
「こんにちは、みなさん」
「……あっ!」
思い出した。あれは見たことのある顔だ。教室で現れた、心の見えない人の顔…。
「みなさんには今からここで、ゲームをしてもらいます。そのゲームに勝った人だけが、外の世界に出ることができます」
心の見えない人は淡々と話しだした。
ゲームって…どういうことだろう。それに、勝った人だけが出られるってことは、負けた人は…?
「なお、ちゃんとゲームに参加しない人は、不戦敗とみなします。それではルールを説明しましょう」
突然やってきてわけのわからないことを話しているその人に対し、みんなぽかんとしている。どこからつっこんだらいいのかわからない。
「ここにいるみなさんの中に3人、人狼がいます。人狼は夜になるとみなさんのうちの誰か1人を襲うことができます。無事殺すことができれば、その夜の襲撃は成功です。そうやって人狼はみなさんの人数を減らしていきます。人狼の数とみなさんの数が同じになった時点で、人狼の勝ちです」
これ…聞いたことある。人狼ゲームだ。
「みなさんは人狼の襲撃を迎え撃つことができます。みなさんが人狼を殺すことができれば、人狼の襲撃は失敗です。また、昼になるとみなさんは話し合いをすることができます。話し合いで人狼と思われる人を1人決定し、処刑することができます。そうやって人狼の数を減らしていき、ゼロにすることができればみなさんの勝ちです」
人狼ゲームは嘘や駆け引きのゲームだ。決して戦闘して勝ち負けを決めるゲームではない。でもこの言い方だと…本当に戦うってことか?
「みなさんの中にはもう1人、狐がいます。狐は人狼に襲われることはありません。しかし昼の話し合いで処刑されたり、超能力を使われると死んでしまいます。狐がゲーム終了まで残っていた場合、狐の勝利となります」
…え?超能力??
「賢明なみなさんはお気づきでしょうが、みなさんの超能力は現在制限されています。なぜなら私が、超能力を制限する力を持っているからです。超能力は昼と夜に1回ずつ使うことができます」
心の見えない人の映像が、だんだん途切れていく。
「ゲーム開始は今夜から。みなさんの部屋に詳しいルールを書いた紙を置いておいたので、気になる方は読んでおいてください。何か質問はありますか?」
「いや…いやいや……」
僕は思わずつぶやいていた。
「質問も何も、意味わかんないよね、尚ちゃん」
「ああ…」
尚ちゃんは周りの人をきょろきょろ見回している。
「こんなふざけたゲーム、誰もやる気ないと思うけど…。夜になったら人狼が襲撃しますって言っても、そんなことしないでしょ、普通」
「それなら心配ありません」
心の見えない人がすかさず答えた。
「人狼や狐はちゃんとゲームに参加します。洗脳してあるので」
「洗脳?!」
「この世界には人を服従させる超能力を持っている人もいます。この屋敷の出口を見つけられないのも、その力によるものです。すごいでしょう?」
「なんだよそれ…」
尚ちゃんは呆然としている。
僕たちはこれから、どうなってしまうんだろう。
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