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超能力編ー1日目・夕方(尚武、透と会話)
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大広間から出て客室のある廊下に戻ると、いつのまにかそれぞれの部屋にネームプレートが貼られていた。
「尚ちゃん、あの、僕、言わなきゃいけないことが…」
尚ちゃんにそう言いかけると、尚ちゃんは笑って首を振った。
「さっきも言ったけど、超能力のこと、あんまり気にしなくていいからね。付き合ったばっかの人に話すことでもないし。とりあえず、自分の部屋に行ってみようよ。後で知真の部屋に行くからさ」
「尚ちゃんは本当に優しいよね。僕…尚ちゃんのそういうところ大好きなんだ」
少し照れながらそう言うと、尚ちゃんは嬉しそうに僕を見つめた。
「俺も知真のこと、大好きだよ。素直で可愛くて」
「そ、そんなこと…えへへ」
「あの…ちょっといいですか」
「へっ?!なんでしょう」
突然声をかけられ、横を見ると愛子さんが立っていた。
「そこ、どいてもらってもいいですか。わたしの部屋みたいなんで…」
「あ、ああ!ごめんなさい」
僕たちがずれると、愛子さんは少し頭を下げてさっと部屋に入っていった。
「びっくりしたー。横にいたの、全然気づかなかった。部屋の前で話してて、嫌な思いさせちゃったかな…」
僕が小声でそう言うと、尚ちゃんは僕の頭にポンと手を置いた。
「気にすることないよ。そろそろ部屋に行ってみようか。また後でね」
「うん!またね!」
尚ちゃんが部屋に来るの、楽しみだなあ。
自分の部屋に入ると、机の上にメモ帳が置いてあった。中を見てみると、さっき言っていたゲームのルールが書いてあるページがあった。
ルール
<1日の流れ>
昼
話し合いをして、人狼と疑わしき人物を1人選び、処刑する。一度だけ超能力を使うことができる。
夕方
自由時間。
夜
人狼→11時50分から12時の間の10分間、超能力が解放される。その10分間、誰か1人を選び襲撃する。襲撃する相手を選んで自室を出た後は、その相手を変更することはできない。
村人→11時40分から12時の間の20分間、超能力が解放される。その間、部屋の外に出ることは、GMからの許可を得ない限り原則禁止である。人狼が襲撃に来たら応戦する。
狐→11時40分から12時の間の20分間、超能力が解放される。人狼が襲撃相手に選ぶことはできない。昼夜関わらず、超能力を使われたら死ぬ。
<勝利条件>
人狼→村人と人狼の数が同数になる。
村人→人狼の人数をゼロにする。
狐→ゲーム終了時に生き残っている。
勝ったチームは外に出ることができる。
負けたチームの生存者は処刑される。
<超能力の制限>
ゲームを成り立たせるために、参加者それぞれの超能力には制限がかけられている。
あなたの超能力には「心の声を聞けるのは、一度につき1人だけ」という制限がある。
超能力の制限…か。あの人、超能力を制限する力を持ってるとか言ってたけど、こんな細かいこともできるんだな。
それに、人を洗脳し服従させる超能力を持ってる人がいるって言ってたけど…本当なんだろうか?その人と協力して僕たちをここに閉じこめてゲームを行わせようとしてるってこと?
外の世界はどうなってるんだろう?僕たちがいなくなって、学校や家族は騒いでいるんだろうか?
気になることばかりで心が落ち着かない。夜になると誰かが襲いに来るかもしれないし…。
僕は大きなため息をついた。
コンコン
ドアがノックされる音だ。尚ちゃんが来てくれたのかな!
うきうきしながらドアを開くと、予想外の人が立っていた。
「えーっと…透さん、でしたっけ?」
「やあ!よく覚えてたね」
僕が何も言わないうちに透さんはずかずかと部屋に入ってきて、ベッドに座った。そしてにやにやしながら僕を見て言った。
「知真くん、ゲイなんだよね?セックス好き?」
「…は?」
非常識すぎて言葉に詰まってしまった。
「いやー、お近づきの印にね、媚薬とかローターとかローションとか色々持ってるからあげようかなと思って。あ、なんなら僕とセックスする?」
「いや、ちょっと…帰ってください」
ドアを開けて促すけど、透さんは全く立ち上がろうとしない。
「あれ?もしかしてそういうの免疫ないの?まだやったことない?大丈夫!最初は誰でもそうだよ。なんなら僕が手取り足取り教えてあげ」
「や、ほんと、迷惑なんで!お帰りください!帰れ!」
透さんのすねを蹴とばそうとしたら、ベッドの上にごろんと寝転がって回避された。なんだかめちゃくちゃ腹が立つ。
「あはは、ごめんごめん。まあそれは置いといて、知真くんにちょっと話があって来たんだよね」
「なんですか?もうすぐ尚ちゃんが来るんで早く帰ってほしいんですけど」
「わかったわかった。あのさ、知真くんは人狼ゲームって知ってる?」
「まあ一応…。1回やったくらいなんで、ルールとかあんまり覚えてないですけど」
僕がそう言うと、透さんは嬉しそうな顔をした。
「じゃあ話が早い!知真くん、占い師って覚えてる?」
「えーっと…夜になると誰か1人について人狼かどうかわかる、ってやつですよね?」
「そそ。それで僕的にはね、知真くんは、このゲームにおいて占い師の役割を果たすと思うんだよね」
「え、どういうことですか?」
「知真くんは人の考えてることがわかるんだよね。だから、夜の襲撃の時間にその能力を使えば、誰が人狼なのかわかっちゃうってわけ」
「ああ…それはそうなんですけど、さっきルールが書いてある紙を見たら、超能力は1回につき1人に対してしか使えないって書いてあって…」
「ふーん。じゃあ、誰か選ばないといけないね。人狼っぽい人か、襲われそうな人。とりあえず怪しげな人に対して能力を使って、誰が人狼かのヒントを得ていく必要があるね」
「なるほど…難しそう…」
ぼんやりとつぶやくと、透さんはにっこりと笑った。
「大丈夫だよ。なんなら僕も一緒に考えてあげようか?セックスしながら」
「さっきからそんなことばっかり…。ゲイだからってすぐそういうことにつなげるのやめてほしいです」
「あはは、ごめんね。僕自身がすぐそういうことにつなげちゃうゲイだからさ」
「えっ?」
この人…ゲイなの?てっきり僕を面白がって馬鹿にしてるんだと思ってたけど。
ぽかんとしていたら、透さんはひらりと立ち上がって歩きだした。
「じゃ。僕はアドバイスに来ただけだから。…ゲームを面白くするためにね」
そう言ってそのまま出て行ってしまった。
なんか…変な人。
透さんと行き違いで、尚ちゃんが来てくれた。
尚ちゃんはふわふわと出て行く透さんを怪訝そうに見つめた後、僕に問いかけた。
「あの人、どうしたの?知真に何か用だった?」
「あ、うん。えっと…」
…セックスがどうのこうのって言うのは、話さなくていいよな。
「夜になったら、怪しい人に対して力を使うといいよって。僕の能力、1回に1人に対してしか使えないから、人狼っぽい人とか、襲われそうな人とか選んで。そんなこと言われても、よくわかんないけど…」
「へえ…でもそうしたら、知真はどうするの?襲われた時、能力で抵抗することができないよ」
「あ…そっか。いやでも、どうせ僕の能力、戦うのには向いてないし」
「そんなことないよ。人の考えがわかるってことは、相手の次の行動がわかるってことでしょ?先読みして攻撃を防ぐことができるんじゃない?やっぱり、誰かが襲ってきたときのために、能力は使わずにいた方がいいよ」
「や、でも…早く外に出るためには、僕の能力はみんなのために使った方が……あ!そ、その…ごめん!」
「ん?何が?」
「尚ちゃんが心配してくれてるのに、僕、反対しちゃって…」
「気にしなくていいんだよ、そんなの。知真のしたいようにしなよ。俺はどんな状況でも絶対知真を守るから」
尚ちゃんは力強くそう言って僕の頭を撫でた。
「尚ちゃん…好き」
尚ちゃんは優しい。それに俺のことを思ってくれている。それは心の声が聞こえなくても伝わってくる。
「あのね、昼も言ったけど、僕、他人の考えてることが全部わかるんだ」
「うん」
「いつか打ち明けて謝らなきゃって思ってはいたんだけど…ごめんね。尚ちゃんの心の中も勝手にのぞいちゃってた」
「謝らなくていいよ。仕方ないことだし。それに、心の中まで知った上で俺のこと好きになってくれたなんて、すごく嬉しい」
「あの…あのね、もう一つ謝りたいことがあって」
こんなこと言ったら失望されてしまうかもしれない。能力が使えないから、尚ちゃんの本当の気持ちはわからない。でも尚ちゃんには…全部話しておきたい。
「僕…尚ちゃんの考えてることがわかるのを利用して、わざと尚ちゃんに好かれるように行動してたんだ。だから、尚ちゃんが好きって言ってくれてるのは、好きって思われるように行動した僕であって、本当の僕とは違うんだ。ずるいことして…ごめんね」
僕が下を向くと、尚ちゃんはぎゅっと抱きしめてくれた。
「そんなの全然、謝ることじゃないよ。むしろ嬉しいな。知真が俺に好かれるように頑張ってたって知って」
「で、でも、尚ちゃんが好きになったのは、偽物の僕なのかもしれないし…」
「偽物じゃないよ。だいたい、能力が使えなくても誰だってやってることだよ?好きな人に好かれるように行動する、なんて」
「尚ちゃん…」
「俺は、知真のしてくれることならなんでも嬉しいよ。信じて」
「…ありがとう。信じる」
ああ…幸せだ。こんな状況だけど心からそう思う。
僕と尚ちゃんの幸せのためにも、このゲームに勝って早くここから出なくちゃ。
「…そろそろ夜になるね。部屋に戻らなきゃ」
尚ちゃんの体がすっと離れていく。
「あの、行く前にもう一回、ぎゅってしてほしい…」
尚ちゃんの服をつかんでそう言うと、尚ちゃんは嬉しそうに僕の手を握った。
そしてぐっと顔を近づけて、僕の唇にちょんとキスをした。
「じゃあ、また明日」
「!!!!」
びっくりして何も言えず固まっている僕をそのままにして、尚ちゃんは部屋を出て行った。
「ファーストキス……」
徐々に顔が熱くなってくるのを感じる。
こんなにドキドキできるのは、心が見えないおかげかもしれない。
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