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超能力編ー4日目・夕方(風見、尚武と会話)
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解散してから、風見さんの部屋を訪ねてみた。
「ごめんなさい、風見さん」
風見さんがドアを開けると同時に、僕は頭を下げた。
「…なんで謝るんだよ」
「僕のせいで、風見さんが植物つかいだってバレちゃって…」
「お前のせいじゃねえよ。…入れば?」
風見さんに部屋の中に入れてもらった。
他に座るところもないから、ベッドに並んで座る。
「お前、怖くないの?殺人犯とか言われてたやつの部屋で二人きりって」
「別に怖くないですよ。ここにいる風見さんは昨日までの風見さんと同じ人だし」
「あっそ…」
風見さんはため息をついた。
でも、この状況、尚ちゃんにバレたら心配かけるだろうな。話し合いの時、尚ちゃんは風見さんを責めるようなことは言ってなかったけど。
「…牢屋にいきなり、あいつがやってきたんだ」
風見さんはぽつりと話し始めた。
「今から始めるゲームで勝てば、俺の冤罪を晴らしてくれるって」
「それって、ここに来る直前の話ですか?」
「ああ。だから俺は参加したんだけど…人殺しの冤罪を晴らすためにデスゲームに参加って矛盾してるよな」
「まあ、でも…風見さんは誰も殺してないですし」
「投票で殺してるだろ」
「そう、ですね…」
事件のことはよく知らないけど、どうやら本当に風見さんはやってないみたいだな。人並みの倫理観も持っているようだし。
「ところで、今夜は俺に能力を使ってくれ。俺は襲われる可能性が高い。人狼の正体は、ちゃんと心の中で念じておくから」
「えっ…風見さん、能力を使えば襲われないんじゃないですか?」
「能力はお前を守るために使うと決めてるから」
「で、でも、僕なんかより、自分の身を守らなくちゃ…」
「お前が襲われるのが、一番まずい。お前の能力は人狼の正体を暴くために重要な能力だからな」
「でも…」
「お前が俺の心を読んでいれば、人狼が俺を襲いに来たとき、正体を知ることができる。一石二鳥だろ」
一石二鳥はちょっと使い方違う気がするけど。
「俺にとっては、自分が生き残ることよりも勝利することの方が大事なんだよ。だから、頼む」
「自分が死んだとしても、冤罪を晴らしたいってことですか?でもそんなの、意味ないんじゃ…」
「意味はある」
風見さんはきっぱりとそう言った。
「若菜を殺した本当の犯人を、警察に捕まえてほしいんだ。そうじゃなきゃあいつが浮かばれない」
「若菜さんって…風見さんの恋人なんですか?」
「いや…違うよ。でも大切な人だ」
恋人じゃないけど大切な人…。それってどんな人なんだろう。
「ちなみに、まもりちゃんに似てるんですか?」
「は?なんで?もしかして、操士が言ってたこと間に受けてんのか?」
「あ、えっと…そういうわけじゃないんですけど」
「若菜とまもりちゃんは全然違うよ。でもまあ…たしかにまもりちゃんは、俺が好きだった人に似てる」
「はあ」
「興味ないなら聞くなよ」
「興味ないというか、反応に困りました」
「興味ねえから反応に困ってんだろ」
「あー…」
「若菜は、その人の婚約者だよ」
「へえ…………ん?」
「じゃ、もう帰れ」
風見さんにぐいぐいと廊下へ押し出され、ドアを閉められた。
え、いや、どういうこと!
若菜さんって、女の人だよね?で、風見さんは若菜さんの婚約者のことが好き…?
気になる!めちゃくちゃ気になるよ風見さん!!
悶々としながら自分の部屋に戻ると、ドアの前に尚ちゃんが立っていた。
僕の姿を見ると、にこっと笑った。
「尚ちゃん!もしかして、ここで待っててくれてたの?」
「うん。知真と話がしたくて」
「ごめんね!待たせちゃって…」
「気にしないで。知真、ここに来てから大変な思いばっかりしてるよね。俺がもっと支えてあげなくちゃと思って。あんまり話できてなかったし」
「尚ちゃん…ありがとう!!」
嬉しいな。尚ちゃんが僕のことを気遣ってくれてる。
尚ちゃんの顔をじっと見つめると、尚ちゃんは照れたように僕の髪をくしゃっと撫でた。
2人でベッドの上に座る。風見さんの部屋では何とも思わなかったけど、尚ちゃんの隣に座るとドキドキしちゃうな。
「尚ちゃんは誰が人狼だと思う?」
僕がそう尋ねると、尚ちゃんは首を傾げた。
「うーん…全然わかんないな。あんまり気にすることないんじゃない?」
「え?」
「人狼が誰だろうと、知真は俺が守るから、安心してよ」
「で、でも…負けたら殺されちゃうんでしょ?人狼が誰なのか考えた方がいいんじゃ…」
「そんなことより、俺はもっと知真といちゃいちゃしたいな」
「尚ちゃん?!」
尚ちゃんが僕の腕にすり寄ってきた。
いつもしっかりしてるように見える尚ちゃんが、急に甘えてきた。めちゃくちゃ可愛い。
「でっでも!いちゃいちゃは生きて帰れた後にしようよ!」
「どうして?」
「な、なんか…怖いし」
「怖い?…俺が?」
「違うよ!いいことの後には悪いことが起きるものじゃん。今いちゃいちゃしたら、もう二度と会えなくなるんじゃないかって気がして…」
明日、尚ちゃんが広間に現れなかったら…無残に殺されていたら…想像するだけで泣きそうになる。
尚ちゃんがぽんぽんと僕の背中を撫でた。
「俺はずっと知真と一緒にいるよ。安心して?」
「う、うん…」
うつむいている僕の顔を、尚ちゃんが下から覗き込んだ。
「泣いてない?」
「泣かないよ!」
むっとして顔を上げると、尚ちゃんにキスされた。
ぶわっと顔が熱くなる。
離れていく尚ちゃんの唇を目で追っていると、尚ちゃんはふっと笑って僕を抱きしめた。
「好きだよ、知真」
「うん…僕も」
尚ちゃんの背中に手を回すと、尚ちゃんは一層強く僕を抱きしめてくれた。
「尚ちゃんは、どうして僕と付き合ってくれたの?男同士なんて、大変なことばっかだけど…」
「そんなの、知真が好きだからに決まってるじゃん。性別なんて関係ないよ」
「関係ない、かなぁ…」
「大事なのは人間の中身だよ」
尚ちゃんは力強くそう言った。
「俺は知真の、まっすぐなところが好きだよ。純粋で、思いやりがあって、見てるとほっとけなくなる」
「ありがとう…そんな風に言われると照れちゃうな」
「知真はどうして、俺のことが好きになったの?」
「僕は…」
尚ちゃんとの出会いは、正直よく覚えていない。最初はなんとも思ってなかったから。
ただのクラスメイトだった尚ちゃんを意識するきっかけになったのは、僕がゲイだとクラスの人にバレそうになったときのことだ。
口には出さなかったけど、クラス中の人の心の声が飛び込んできて、辛くて泣きそうになったとき、ふと尚ちゃんの姿が目に入った。
『知真くん、大丈夫かな?助けてあげたい』
優しい言葉が僕の頭の中で響いた。
目が合うと、尚ちゃんは微笑んでくれた。
その瞬間、泣きそうだった気持ちがすっと消えていって、かわりに心の中は尚ちゃんでいっぱいになったのだ。
それからというもの、僕は尚ちゃんから目が離せなくなった。どんな時にも、尚ちゃんはすごく優しい考え方をしている。行動と思考に裏表がない。そんな人、僕はほかに会ったことがない。
「知真?」
昔のことを思い出して、ぼーっとしてしまっていた。
「ごめん!尚ちゃんを好きになったときのこと、思い出してた」
「え?いつ?」
「えっと…あはは。ないしょ」
「何それ」
尚ちゃんはふふっと笑って僕の背中を撫でた。
「尚ちゃん」
「なに?」
「ずーっとこうしてたい」
「俺もだよ」
好きだ。尚ちゃんが好きだ。
抱き合っていると、尚ちゃんの胸の鼓動が伝わってくる。一緒に生きている証のような気がして、幸福感に満たされる。
「尚ちゃんは僕のこと守るって言ってくれたけど、僕だってそんなに弱くないからね?」
「ん?そうなの?」
「そうだよ!僕だって男の子だもん。尚ちゃんのこと、守ってあげる」
「うん…ありがとう」
そう言うと、尚ちゃんの体はゆっくりと離れていった。
「そろそろ行かなくちゃ。夜になっちゃう」
「そうだね…」
「そんな寂しそうな顔しないで。明日絶対会えるから」
「うん…」
そうだ。尚ちゃんには明日また会える。それにここから出たら、いっぱい一緒にいられるんだから。
「…あ、そうだ。まもりちゃんが言ってたんだけど」
2日目にまもりちゃんに言われたことを、ふと思い出した。
「ここから出る方法は、ゲームに勝つことだけじゃないって」
「え?どういうこと?」
「まもりちゃん、他人を操る能力を持っている人は、僕たちの中にいるんじゃないかって言ってたんだ。処刑の様子とか見てると、そんな感じがするって。だから、その能力を持ってる人を見つけて、能力を解除してもらえば、出口が出現して外に出られるんじゃないかな」
「ああ…なるほど」
「尚ちゃんは何か心当たりある?そういう能力を持ってそうな人」
「うーん…」
尚ちゃんは少し考えるそぶりを見せたが、首を横に振った。
「ごめん。わからないや。そんなこと考えてもみなかったから、あんまり注意してなかったな」
「あー、そうだよね。もっと早くに話しておけばよかった」
「…あ、でも1つ思ったんだけど」
「えっ!何?」
「能力のせいで僕たちが出口を見つけられないでいるってことは、その能力の人は他人の行動だけじゃなくて認識も操れるってことだよね。実はすでに死んでる人だったりして。みんなの認識を操って、死んだようにみせかけてたり」
「たしかに…なんでもできちゃうね」
「あとは透さんの死体がなかったのも気になるかな。操士くんが言ってたみたいに、綾乃さんの能力で消失してしまったのかもしれないけど…透さん、本当に死んだのかな?」
「すごい。尚ちゃん頭いいね!」
「えっ、そうかな?あはは」
「話し合いのとき、もっとしゃべればいいのに。尚ちゃんけっこう控えめだよね?」
「うーん、大勢いると、なかなか会話に入れないんだよね。知真は話しやすいから」
「そうなの?…なんか嬉しい」
…そろそろ本当に、夜になってしまう。
尚ちゃんはベッドから立ち上がり、ドアに手をかけた。
「おやすみ、知真。大好きだよ」
「うん。おやすみ!」
これ以上くっつくと離れられなくなりそうで、僕はあえて、ベッドに腰かけたまま尚ちゃんに手を振った。
尚ちゃんが出て行くと、僕は深くため息をついた。
もっと一緒にいたい。尚ちゃんが夜も隣にいてくれたら、どんなに安心するだろう。
でも僕は1人で聞かなくちゃいけない。風見さんの、心の声を。
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