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超能力編ー4日目・夜
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今から、人が死ぬ時の心の声を聞くことになるかもしれない…。
すごく怖いけど、尚ちゃんと一緒にここから出るためには、僕はこうするしかないんだ。
23時40分になり、僕は風見さんに能力を向けた。
『時間か。じゃあいつも通り能力を使うか』
風見さんの心の声は淡々としている。能力で自分を守るという選択肢を捨てることに関して、何も迷いはない…のかな。
『そういや今考えてることは、全部知真に伝わるんだよな。エロいこと考えたらどうしよう。嘘もつけねえし。偽名…そう、偽名だよ。俺は偽名を使ってる』
緊張しているのか、風見さんの頭の中に無数の考えが生まれて消えていく。
『俺の本当の名前は柘植強矢だ。事件のことがバレたくなくて隠してたけど、まあ、あんまり意味なかったな』
おおっ自己紹介が始まった。僕はニュースをあんまり見ないから、本名を聞いてもピンとこない。
人の心を読んで、その上ニュースまで見ていたら、僕は情報過多で死んでしまうから。
『宮木はどうしてるだろうか。親友に婚約者を殺されて、その上性行為の痕跡があったなんて、ショックを受けないはずがない。いつも元気で能天気でアホなあいつが絶望しているところなんて、絶対見たくない』
風見さんが殺したとされてるのが若菜さん、それでその婚約者が宮木さん。宮木さんと風見さんは親友らしい。
昼はあんまり詳しく教えてくれなかったのに、どんどん新たな情報が出てくる。口にしないだけで、思考はぐるぐると駆け巡っていたのかもしれない。
『誰が若菜を殺した?誰が俺がレイプしたように見せかけた?許せない。ようやくあいつが幸せになるところだったのに』
怒りの感情が伝わってくるのはしんどい。もうすぐ殺されるかもしれない間際になって、風見さんの心の奥からどんどん湧き出てくるみたいだ。
『あいつが好きだった。あいつにとって俺はただの友達だったけど、あの夜のこともなかったことにされてるんだろうけど、でも、好きだった。幸せになってほしかった』
23時50分になった。
『宮木に会いたい。笑顔が見たい。昔に戻りたい』
どうかこのまま、何事もなく夜が過ぎてほしい。風見さんに守られた僕の部屋に来て、諦めて帰ってほしい。
このまま死んだら、風見さんがかわいそうだ。
『…まもりちゃん?あっ…熱!熱い!ぐっ、うわああああああ』
その声を最後に、風見さんの声は全く聞こえなくなった。
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