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超能力編-6日目・夕方
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操士くん…ではなく、工士くんは、真っ暗になった画面を見ながら微笑んでいた。
「あーあ。終わっちゃった」
みんながしんとしている中、工士くんはゆっくりと透さんを見据えた。
「どうして透さんがこんなことするのか、よくわかんないな。僕、頭悪いし」
「ん?よく撮れてたでしょ」
「たしかに。操士の表情、よく見えてなかったから見られて嬉しいな」
「工士、くん…?」
僕は消えそうな声で呼びかけた。
「工士くんが、人狼なの?みんなを殺したの?」
「うん。そうだよ」
工士くんはにっこり笑った。
「投票…投票、やり直そう!やっぱり尚ちゃんは人狼なんかじゃなかったんだよ!」
「それは遅いんじゃないかなぁ」
「え…?」
ふと尚ちゃんを見ると、体が全く動いていなかった。駆け寄って体をさすっても反応はなく、息もしてない。
「そ、んな…」
「可哀想に。大好きな人が死んじゃったね」
「あ、あああ…」
足元がぐらぐらと崩れていく。
尚ちゃんがいなくなってしまった。
もう会えない。しゃべれない。体をあたためあうこともない。
「お、お前のせいで…」
涙でかすむ目で工士くんを見上げると、工士くんは無表情で見つめ返してきた。
「悪いのは透さんだよ?さっきの映像、話し合いの前に撮ってたって言ってたのに。流すの遅すぎだよね」
「……」
「まあ、僕を恨んでも仕方ないよ。もう死んじゃうんだもん」
「…え?」
「ほら、能力には制限がかかってるでしょ?例えば知真くんは、一度にひとりに対してしか能力が使えない。僕には、制限っていうかペナルティがあるんだよね。ゲームバランスの関係かなぁ」
工士くんは不満げに続けた。
「僕は、自分の能力が生存者全員に知られたら死んじゃうんだ。だから、ここで終わ……あれ?」
工士くんはそこで、何かに気づいたらしく、嬉しそうに手を叩いた。
「そっかあ!今生きてる人全員殺せば、生存者はゼロになるよね!そうすれば死ななくてすむし、超能力者3人同時に殺すなんて、わくわくしちゃ…うっ…!」
工士くんのつま先から火の手が上がった。
「あはぁ、気づくのが遅かったか…」
炎は急速に大きくなり、工士くんの体を包んでいく。
「知真くん、最後に1つだけ伝えておきたいんだけど」
「…何?」
「僕も尚武くんの心読もうとしてみたんだけどさ、何も聞こえなかったよ。昼も夜もずーっと。それに…」
言いかけた言葉をかき消すように炎は勢いを増し、工士くんの姿は見えなくなった。
まもりちゃんの時と違って、工士くんを焼き尽くしても、炎はおさまる気配がない。
「このままここにいるのは危険よ!とにかく部屋から出ましょう!」
広衣さんがそう叫んで僕の手を引っ張った。
「で、でも尚ちゃんが…!」
尚ちゃんの死体は炎の向こう側にある。僕が助けないと、尚ちゃんは黒焦げになってしまう。
「もう無理よ!これであなたが死んだら、尚武くんも悲しむわよ!」
「悲しまないよ!尚ちゃんは死んだんだから!!」
「いいから、こっちに来なさい!」
広衣さんは強い力で僕を広間の外へ押し出し、扉を閉めてしまった。
「尚ちゃん…尚ちゃん……」
「あー、暑い暑い」
やけに能天気な声がする。
顔を上げると、にやにやしながら僕を見下ろす透さんの姿があった。
「…何、笑ってるんですか。透さんがもっと早く映像を流していれば、こんなことには…」
「あはは、ごめんね」
「そ、そうだ!時間、戻してよ!尚ちゃんが多数決で負ける前に!そうすれば、僕は尚ちゃんを助けられる!」
「んー、ごめんごめん。それは無理!」
「どうして…」
「ほら、さっき工士くんも言ってたけど、能力には制限があるでしょ。僕の能力は、話し合いに使ってはいけないっていう制限があるのよ」
「うん…?」
「僕が昨日にタイムスリップして、工士くんが人狼だってわかったとしても、話し合い中にその情報を提供することはできない。今から過去に飛んで話し合いの結果を変えてくることもできない」
「うん…」
「それができたら、最初から最終日に飛んで、結果を全部把握してみんなに教えたら終わりになっちゃうからね!ゲームが破綻する」
理解は、できたけど…。
それでもなぜけろっとしていられるんだろうか。自分のせいで、尚ちゃんが死んだのに。
「知真くん、尚武くんのことばっかり気にしていられないよ」
透さんは僕のあごを優しく掴んだ。
「ゲームは終わってない。次に死ぬのは君だね」
終わってない…?
こんなにたくさん人が死んだのに、まだ人狼が残っているの…?
ふと周りを見ると、さっきまでいたはずの広衣さんがいなくなっていた。
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