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人狼編⑸
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2日目・昼
次の日、集合場所にナオキは来なかった。
俺は昨日のことを思い出す。
俺とヤスがコテージに入ってきたとき、ナオキがどんな顔をしていたのかはわからない。申し訳なくて、見ることができなかったのだ。
俺が見たのは、気持ちよさそうにうっとりとヤスを見つめる顔だけだ。
嫉妬と後悔と明日への不安で押しつぶされそうだ。
こんなことが何日も続くのか?
「ナオキさんは、狼に食べられてしまいました」
鴨がたんたんと話す。
「これから話し合いの時間です。この中に潜むゲイを見つけ出し、多数決で指摘してください。その結果について、こちらからは一切口出しいたしません」
この子本当に3歳なのか?
中身だけ猛スピードで年をとってるんじゃないか?
「それでは、始めてください」
<話し合いスタート>
残り人数 10人
シン
ヤス
エドガー
ユキト
ユタカ
ケイゴ
コタロウ
ミズキ
ミナト
ユウスケ
×ナオキ
ミズキ「お、狼に襲われたって、つまり…」
ミズキが泣きそうな声を出す。
ミナト「男に犯されたってことだよな。まさか本当にこんなことになるなんて…」
ミズキ「ヒイイッ僕帰りたい」
ユタカ「ったく。こんな怪しいバイトやめて帰っちまおうぜ」
ユキト「俺も眠いから帰りてー」
シン「いや、それはだめだよ!」
思わず口を挟んでしまった。
ユタカ「なんだ?お前は変だと思わねーのかよ」
シン「ここで帰ったらバイト代が減ってしまう。みんな、お金に困ってるんだろ?ここで一山当ててMRJでも購入しようよ」
エドガー「たしかに、ここで帰るのは賢明ではないかもしれんな。それに、これはただのゲームだ。頭を働かせれば、必ず勝てるはずだ。安心しろ!私は名探偵だ」
ヤス「そうだな。力を合わせて頑張ろう!」
とりあえず、もうやめてしまおうという空気は解消された。
ミナト「じゃあ早速話し合いを始めよう。…何を話そうか?」
エドガー「占い師という役職があると言っていたな。昨日わかったことを話してもらおうか。占い師はいるか?」
ヤス「俺が占い師だ。ユタカを占ったが、ノンケだった」
一拍おいてヤスが答えた。
ユタカ「おう。お前やるじゃねーか」
ヤス「えへへへへ」
ケイゴ「それは真っ赤な嘘だ」
ケイゴが立ち上がった。
ケイゴ「俺が占い師だ。ヤスを占って、ゲイだと判明した」
シン「なんだと!」
万事休すだ。本物の占い師に指摘されてしまうとは…。
ヤス「それこそ嘘だ。俺が名乗り出た後、突然名乗り出て俺をゲイだと言いがかりつけるなんて、いかにも怪しい」
ケイゴ「俺は全く怪しくないぞ。昔、クラス中の女の子のリコーダーが盗まれたことがあって、お前がやったんだろうと皆から疑われたときも、俺は無実だった」
シン「男の子のリコーダーしか興味ないから?」
ケイゴ「ファッ?!違うぞ!!」
ユウスケ「リコーダーハンターケイゴ…」
ケイゴ「だから!俺は盗んでない!どうせ盗むなら自分のリコーダーと入れ替えるし!」
コタロウ「なるほどな。所有物の入れ替えをすることにより、魔の契約を結ぼうというのだな」
ケイゴ「何言ってるのかわからない…」
ミナト「どんどん話がズレてるぞ!ヤスとケイゴのどちらが本物かって話だろ」
ユキト「めんどくさいし、じゃんけんで決めようぜ」
エドガー「まてまて。考えればきっとわかるはずだ」
俺の役目は、どうにかしてケイゴが偽物って方向に話を持っていくことだろう。
でも、俺が怪しまれてもよくない。どうすればいいんだ?
ミナト「とりあえず、ヤスを追放してみるといいんじゃない?それで、明日の朝になった時にスパイの結果を聞けば、どっちが本物かわかる」
シン「それはちょっと早急すぎるんじゃないか?ヤスが本物だった場合、この先占い師不在の状態で進むことになる。そういう判断をするのは、もうちょっと後でもいいと思う」
エドガー「確かにその通りだ。日数を重ねていけば、どちらが偽物なのかわかってくるかもしれない」
ユキト「俺は反対だ。めんどくさいからとっとと確定させたい。ヤスがゲイってことに賭けて、一発逆転させよう」
ユタカ「その思い切りの良さ、気に入った。俺もヤスに投票しよう」
シン「おいおいおい、その思い切りは後にとっとこうよ」
ミズキ「後にとっておくってことは、襲われる可能性も増えちゃうかもしれないよね?僕としては早く終わらせておうちに帰りたいな」
ケイゴ「そうだな、みんなの言う通りだ!ここはひとまずヤスを追放だ!」
ヤス「俺は本物の占い師だ。ここで追放して、後で後悔しても知らないぞ」
ケイゴ「出た!後で後悔する!日本語間違っていーるー」
ヤス「つまらない揚げ足を取るんじゃない!」
ミナト「このままじゃ、上手くまとまらないな…」
ユキト「じゃあ、じゃんけんだ。もうじゃんけんしかない。俺は疲れた」
エドガー「…わかった」
ユキト「お?じゃんけんにするか?」
エドガー「いや、多数決で決めよう。本物の占い師を失う可能性があっても、ここで確定させたい人は、ヤスに投票してくれ」
ミナト「そうじゃない人は?」
エドガー「確かめるのを後にして、まだ占い師を残しておきたい人は、私に投票してくれ」
シン「え…お前はそれでいいのか?」
エドガー「仕方あるまい。俺は何の役職もないから、この先いてもいなくてもそう影響はないだろう。占い師かもしれない人物を追放してしまうくらいなら、私を追放してくれ。私はまあ、ケイゴにでも投票しておくことにする」
ミナト「エドガーは名探偵?なんだろ?この先いたら役に立ちそうだけど…」
エドガー「私よりも占い師のが大事だ。真実を知ることができるのだから」
コタロウ「その心意気…我が王国に帰還した際には召し抱えたいほどだ」
ミナト「お前、自分の中でのキャラ設定、ちゃんと確立させてるか?」
ケイゴ「さ、そんなことはいいから、投票に移ろう!誰がなんと言おうと俺は本物の占い師だ。ここでヤスを追放しとけば、ぜーんぶ上手くいくよ。鴨くん、お願いしまーっす」
<結果>
エドガー 4票(シン、ヤス、コタロウ、ユウスケ)
ヤス 5票(ケイゴ、ユタカ、ミズキ、ミナト、ユキト)
ケイゴ 1票(エドガー)
「そんな…」
ヤスが呆然としている。
まさかこんな序盤でいなくなってしまうとは…。
これで俺は1人になった。寂しいというのもあるが、それ以上に、この先一人でやっていけるのか、というのが一番不安だ。
どうも考えるのを放棄しがちな人が多いし、なんてことない理由で追放されかねない。
目立たず、埋もれず、上手くやっていかなければ…。
「さあ、行きましょう、ヤスさん」
鴨がヤスを引っ張り、船の方へと連れて行く。
その姿をじっと見つめるが、ヤスは振り返らなかった。
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