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人狼vs狩人編(3)
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side:アラン
エドガー先輩がいなくなってから2日が過ぎた。
あの日は結局、トラブルがあってまだ会わせることができないと言って、村木と名乗った男はどこかへ行ってしまった。
エドガー先輩はいないけど、せめて溜まっている仕事を片付けようと思い、今日も事務所に来ている。書類を見ようと手を伸ばした時、インターホンが鳴った。
「はい…」
ドアを開けるとそこには村木がいた。
「遅くなってごめんね。すぐに出発してほしいんだけど、行ける?」
「やっとエドガー先輩に会えるんですね!」
「あー…まあそうなんだけど…これ見て」
村木に地図を渡される。
「なんですか?港に目印がありますけど」
「うん。今からそこに行って船に乗って」
「…え?どこに連れていかれるんですか?」
「えーと…秘密。俺は船まで一緒に行くことはできないから、一人で行ってくれ」
「はあ…」
エドガー先輩は一体どこにいるんだろう。船に乗って行くような場所?それとも船の中?
「じゃあ、またね」
村木はそう言って去っていった。
急いで地図に示された場所へ向かうと、知らない男の人に、とまっている船に乗るよう促された。
怪しみながらも船に一歩踏み入れた途端、船は岸から離れ、動き出してしまった。
「ちょっと!これどこへ向かうんですかー?」
港に残っている男の人に向かって叫んだが、返事はない。ずっと外にいても仕方がないので、僕は船の内部に入ってみることにした。
船の扉を開けると、椅子がずらっと並んでいて、男の人が数人かたまって座っていた。その中に見覚えのある後ろ姿を見つけ、僕は思わず駆け寄った。
「エドガー先輩!やっと会えました!」
「ア、アラン…?」
エドガー先輩はぎょっとしたような表情をされ、僕は少し傷ついた。
「お前…なぜここに…?」
「エドガー先輩が心配なので、ついてきたんです。先輩こそ、どうしてこの船に乗ったんですか?」
「そ、それは…」
僕が来たことによほど驚いたのか、エドガー先輩は口をぱくぱくさせている。
「君たち、ちょっと静かにしてくれないかな」
その時、後ろから声をかけられた。座っている人のうちの一人に注意されてしまったようだ。
「すいませーん」
「…私も、どうしてここに連れてこられたのかは全くわからない。詳しくは後で話すことにして、とりあえずどこかに座ったらどうだ?」
「エドガー先輩、お隣いいですか?」
「見ての通り隣は空いてないんだが」
「あっちで一緒に座りましょうよう!」
「断る。少し寝たい」
「む…」
もう会話は終わりだとばかりに、エドガー先輩は目をつむった。
仕方がないので、せめてなるべくエドガー先輩の近くに座ることにした。そして座ったところで、隣にいるのが先ほど注意してきた人であることに気づき、少し気まずく感じる。
しかし、その人は僕に気づいていないのか、ぼーっと窓の外を眺めていた。
「何か面白いものでもありますか?」
「え…?」
あまりにぼんやりとしているのが気になり、思わず話しかけてしまった。
「別に、ないよ」
その人は窓から目をそらし、こちらを見た。
「僕、アランっていいます。あなたは?」
「俺はシンだよ」
「シンさんですね!シンさんは、この船がどこに向かっているのか知ってますか?」
「知らない。俺はただ、儲かるバイトがあるって聞いて来ただけだ」
「そうなんですか。…お金に困っているんですか?」
「お金に困る…?それは違うぞ。俺は、より多くのお金を手に入れたいんだ」
「はあ。必要以上に?」
「必要以上に」
シンの目に強い光が宿っている。なんだか変わった人だ。
それにしても、バイトだなんて聞いていない。僕、働かされるんだろうか。
エドガー先輩ほどじゃないけど、仕事柄、体力には自信がある。肉体労働をして帰してもらえるなら、それはそれでいいけど、そんなに単純な話ではないようにも感じる。
「頑張って稼ごうな!」
シンが握手を求めてきた。
「えーと…僕はそんなに、お金はいいです」
「お金がいらない…?どうして?」
シンは宇宙人でも見たかのような目をしている。
「あんまり欲しいものもないし。僕はエドガー先輩と一緒に働けたらそれでいいんです」
「エドガー先輩って…」
「さっきシンさんに注意された時に話してた人です。すっごくかっこいいんですよ!」
「そ、そうか」
エドガー先輩のかっこよさについて語りたいところだけど、シンが若干引いているのを見て、やめておくことにした。僕だって、空気くらい読めるのだ。
そうこうしているうちに、船はどうやら目的地に着いたみたいだ。
何があるのかわからないけど、僕が絶対エドガー先輩を守ってみせる。
改めてそう決心をして、僕は下船した。
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