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人狼vs狩人編(7)
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2日目・昼
side:アラン
こんな環境ではあるけれど、なかなかぐっすり眠ることができた。これまで色んな修羅場をくぐり抜けてきたおかげかな。
こんな風に、僕にとって今の仕事が与えてくれたものはたくさんある。それは同時に、エドガー先輩が与えてくれたものでもある。だから僕は、エドガー先輩を守りたい。
「おい、アラン」
集合場所に向かって歩いていたところ、小声で呼びとめられた。
辺りを素早く確認し、僕は隣の茂みに入った。
「エドガー先輩…!」
「ちょ、やめろ」
嬉しさのあまり、隠れていたエドガー先輩に抱きつこうとしたら、突き飛ばされてしまった。
「痛いです先輩…」
「そんなことより、どうしてアランがここにいる?事務所で待っていてくれって言ったよな?」
「エドガー先輩が心配で着いてきたんです」
エドガー先輩は大きくため息をついた。
「心配いらないよ。数日で帰るって言ったじゃないか。一人でふらっと出て行くことなんてそう珍しいことでもあるまいし」
「いいえ心配です。先輩はここ1ヶ月くらい、明らかに様子がおかしかったです。ぼーっとしてたり、妙に距離を感じたり。しかも、先輩2回いなくなりましたけど、その度に悪化してるように見えるんです。今回も何もせずに帰りを待っていたら、一体どうなってしまうのか…。ひょっとしたら、もう帰ってこない可能性だってあると思いました」
真剣に伝えたつもりだが、エドガー先輩はそっぽを向いてしまった。
「…気持ちはありがたいけど、とにかく来てほしくなかった」
「どうしてですか?僕がいればエドガー先輩は絶対安全ですよ!だって僕は…ッ」
だって僕はボディーガードだから、エドガー先輩をずっと守っていられるんです。
そう言おうとしたところで、背後から急に手が伸びてきて、口をふさがれた。
手を払って振り向くと、そこには透が立っていた。
…全く気づかなかった。いつの間に後ろに?
「2人とも、何やってるの?」
穏やかな表情だけど、目が笑っていない。
僕もエドガー先輩も何も答えずにいると、透はふっと笑った。
「…まあいいや。話し合いならみんなが集まっているところでやってね。フェアじゃないよね?」
「…行こう、アラン」
エドガー先輩に手を引かれて茂みから出た。
集合場所には既に全員が集まっていた。
…ん?全員??
「さて、全員集まってしまいました。昨夜はひっじょうに残念ながらエッチなシーンは見られなかったのです!」
残念ながら、と言うわりには明るいテンションで洋子が話し始めた。
この人は腐女子と呼ばれているらしい。僕にはよくわからない世界だ…。
「結婚記念ということで、せっかく司会をやらせてもらったのに、まったく焦らしてくるね!もうっ」
昨夜は誰も襲われなかったってことだ。
僕はエドガー先輩を守っていたから…つまり、エドガー先輩が狙われていた?
エドガー先輩はあまり歓迎してくれなかったけど、やっぱり僕がいてよかったじゃないか。
「それでは、今日の話し合いを始めてください。…うふふっ。どう?村木くん。わたしの司会っぷり」
洋子が村木の腕を組んで尋ねた。
「ああはいはい。素敵だよ」
「…洋子ちゃん、早く進めないと追放するからね」
「旦那さんに怒られちゃったー!ごめんね透くん!それでは始めましょう」
<話し合いスタート>
残り人数 11人
シン
アラン
エドガー
ショウヤ
ナツキ
ミノリ
ヨウ
ソウタ
ヒロ
ミコト
マサジ
ヒロ「それで…話し合いって、何をすればいいのかな?」
ヨウ「ゲイっぽいやつを決めればいいんだろ?怪しいやつあげてこうぜ!」
ナツキ「おー!カンタンだ!」
ミコトがわざとらしくため息をついた。
ミコト「そんなことをしても話が進むとは思えない。まずは状況を整理すべきだろ」
エドガー「案外ちゃんとしたことも言うんだな…」
エドガー先輩が小声でつぶやいた。昨日ミコトが僕に絡んできたことを思い出してたんだろうか。嬉しいです、先輩。
ミコト「まあ、個人的にはあいつらが怪しいと思うけどな」
ミコトは明らかに僕とエドガー先輩を睨んでいる。
ミコト「もともと知り合いみたいだし、今日も2人で遅れてきているし、ゲイが2人通じてるってことを考えるとな」
アラン「そんな言いがかり……?」
エドガー「アラン?どうした?」
待てよ。これはチャンスじゃないか。
アラン「バレてしまったら仕方ないです」
エドガー「え?」
アラン「ミコトさんが考えた通り、僕とエドガー先輩はゲイです。追放してくれれば、あなた方の勝ちになります。では手始めに、エドガー先輩から追放してください!」
ミコト「はあ…?」
ミコトは虚をつかれたような顔をしている。
ヨウ「開始早々自白か!これは話が早い!」
ソウタ「え、もう帰れるのか。え、本当に?」
場が騒然としている。
アラン「さあ、投票に移りましょう」
エドガー「お、おいアラン…」
エドガー先輩が珍しく焦っている。安心させるように、僕はにこっと微笑み、耳元でささやいた。
アラン「エドガー先輩、大丈夫です。これは…」
シン「ちょっと待った待った」
シンがよく通る声で注目を集めた。
シン「アラン…嘘はよくないよ。いくら帰りたいからって」
気付かれてしまったか…。
シン「たしかにここで追放されれば、もうゲームに参加する必要はなくなるし、男に襲われる心配もなくなる。だけど、ここで2人がいなくなることで、ノンケが2人減ってしまって、勝つのは難しくなるし、襲われる確率も高まってしまう。それはちょっと俺たちに対してひどいんじゃないか?」
アラン「僕はエドガー先輩以外の人がどうなろうが知ったこっちゃ…」
エドガー「アラン、もうやめろ」
アラン「先輩…」
エドガー「シンの言うとおりだ。そんなに逃げたいならアランだけ逃げてくれ」
アラン「僕は…自分の身の安全は、どうでもいいです」
すっかり悪くなってしまった空気をとりなすかのように、ヒロが明るく呼びかけた。
ヒロ「さあ、アランの自白は嘘みたいだし、話し合いに戻ろうか」
ミコト「まったく無駄な時間を使わされた」
ヒロ「じゃあまずは、昨日得られた情報を共有することにしようよ」
ヨウ「情報をきょーゆー?」
ヒロ「昨晩、占い師の人は占いができたわけだよね。その結果を聞けば、何かわかるんじゃないかな」
ショウヤ「それなら、俺が話す」
ミノリ「待って!僕も僕も!」
ナツキ「俺も話したいことがある!」
ヒロ「はいはい。順番な」
ソウタ「3人もいるの…?」
ショウヤ「俺は昨晩、ミコトを占った。そしてノンケであることがわかった」
ミコト「…ふん」
ミノリ「はいはーい!僕はアランくんを占って、ノンケだったよ!」
ナツキ「どうして2人も占い師が?…さては、とんでもないラッキー?!」
ミノリ「あれえ?おかしいね。どうしてかな」
ショウヤ「そんなの、簡単だ。どちらかが偽物ということだろう」
ヨウ「偽物登場!やるなあ!」
ヒロ「あ、そういえば、ナツキは?何か話したいことあるんだよね?」
ナツキ「大したことじゃないんだが、どうやら俺はスパイらしいんだ。追放はしないでくれよな!」
ヒロ「え!大したことじゃん」
…エドガー先輩を追放することは難しくなってしまった。
ゲームの勝ち負けなんてどうでもよかった。もともとやる気がない。
でも今のところ、エドガー先輩を守るための一番の手段は、早くゲイを追放してゲームを終わらせることなのかもしれない。
それなら少しは…考えてみよう。
ソウタ「に、偽物の方を追い出せばいいんじゃないかな」
ナツキ「すごいなソウタ!もう偽物がどっちかわかったのか!」
ソウタ「あ、すいません。わかりません」
ミノリ「僕が本物だよ!ね、アランくん」
アラン「え?」
ミノリ「アランくん、ノンケだよね?僕、アランくんを占ってノンケって出たんだ。つまり、本物の占い師ってこと!」
アラン「たしかに僕はノンケですけど、それだけじゃミノリが本物ってことにはなりません。たまたま当たった可能性もあります」
ミノリ「ふーん…」
僕はどう振る舞えばいいんだ?
なるべくゲイに目をつけられるような言動はしたくないけど、どっちが偽物かはわからないし…
エドガー「今すぐに偽物がどっちかわからなくてもよいのではないか?」
アラン「先輩…!なぜですか!なぜですか!」
エドガー「ゲームが進んでいけば情報も増えていくだろうし…とりあえず、二人とも残しておいて、様子を見たらどうだ?」
アラン「さっすが先輩ー!その通りですね!」
エドガー「あ、ああ……」
エドガー先輩はなぜかうっとおしそうな表情をしている。褒められて照れてるのかな。
アラン「先輩先輩!それなら今ここでは、誰を追放すればいいんでしょうか!」
エドガー「占い師でもなくて、スパイでもなくて、占い師にノンケとも言われていない、グレーゾーンの人物…つまり、ショウヤとミノリとナツキとミコトとアラン以外の人物の中の誰かだな」
アラン「なるほどっ!さすが先ぱ」
エドガー「アラン、頼みがあるんだが」
アラン「なんですか?」
エドガー「しばらくしゃべらないでくれ」
アラン「………」
ヒロ「えっと…仲いいんだね、君たち。それで、誰を追放しようか?」
エドガー「個人的には、ヒロが怪しいと思うのだが」
ヒロ「え、俺?」
エドガー「ああ。他の人よりもこの状況に慣れているように見えてな」
ヒロ「ええ…そんな理由?」
ミコト「そんな曖昧な理由より、もっといい決め方がある」
エドガー「なんだ?」
ミコト「いらないやつを、追放するんだよ」
ソウタ「い、いらないやつを…?」
ナツキ「どうしたソウタ?急に大声出して」
ソウタ「い、いや、普段よく言われるから…」
ナツキ「大丈夫だ!いらない人なんていないぞ」
ミコト「いるぞ。少なくとも、今日この場に限っては」
エドガー「誰なんだ?それは…」
ミコト「あいつだ」
ミコトが指をさした先にいたのは…
マサジ「……」
ヨウ「おーい!マサジー!」
マサジ「………ん?!」
ミコト「信じられないことに、こいつは話し合いが始まった直後からずっと寝ている」
マサジ「ね…ねてない」
ミコト「寝ている」
ヒロ「えーと…俺も見たよ。マサジが寝てるとこ」
ナツキ「実を言うと俺も見てた!」
ミコト「こいつはおそらく…というか絶対、話についてきていない。もう一度説明するのも面倒だし、明らかに戦力にならないから、ここで追放したい」
シン「やる気が全く見られないという点では、ゲイとは言えないような気もするけど…」
ヨウ「たしかにな!ゲイならもうちょっと頑張るよな!」
ミコト「そう思うなら、さっきエドガーが言ったヒロにでも投票すればいい。だが、俺はマサジを追放したほうがいいと思う。今のマサジは単なる数合わせでしかない。邪魔だ」
シン「じゃあ、ヒロに投票するかマサジに投票するかは個人に委ねるとして…投票に移っちゃおうか。これ以上話すこともなさそうだし」
洋子「はいはいはーい!承知しましたよ」
<結果>
マサジ(ショウヤ、ナツキ、ミノリ、ソウタ、ヒロ、ミコト)
ヒロ(シン、アラン、エドガー、ヨウ、マサジ)
マサジはうとうとしながら船まで連れて行かれた。
うらやましい。
僕とエドガー先輩も追放されたいものだ。
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