アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
人狼vs狩人編(16)
-
4日目・夜つづきのつづき
side:アラン
自分のコテージに戻り、ベッドに横になってうとうとしていた時、突然ノックの音がした。
誰だろう。村木がまだ用事があったか、それとも…
警戒心やごろごろしていたい気持ちから、なかなかベッドから出れずにいると、さっきより大きなノックの音が聞こえる。
「アラン?もう寝たのか?」
扉の向こうからエドガー先輩の呼びかける声が聞こえて、僕は飛び起きた。
「エドガー先輩!ようこそようこそ!」
ドアを開けると、エドガー先輩は1人で立っていた。
「どうしたんですか?こんな時間に」
思いつめたような顔をしているし、何かあったのかもしれない…とは思うけど、突然の訪問がうれしくてどうしてもにやけてしまう。
「アランに…話があって来た」
「話ですか?とりあえずどうぞ中へ!」
余分な家具がさっぱりない部屋なので、2人でベッドに腰掛けた。
「…あ!そういえば、エドガー先輩、鍵はどうしたんですか?」
「鍵?」
「僕、今日エドガー先輩のコテージに鍵をかけてきたんですけど、どうやって出てきたんですか?」
「え…?あ、アランってもしかして…」
「言ってなかったですね!僕、ボディーガードなんです。今日はバッチリエドガー先輩を守りました!」
褒めてもらえるかな、と期待をこめてエドガー先輩を見つめた。
しかしエドガー先輩は一瞬驚いた表情をした後、なぜか笑いだした。
「先輩?どうして笑ってるんですか?」
「笑ってる?そうか。笑ってるな。笑うしかないからな」
「先輩??」
「アランには全部読まれてたんだな。さすが優秀な助手だよ」
「あ、ありがとうございます…?」
これ以上話を聞いてはいけない!
そう頭の中で叫ぶ声がする。
「アラン、私はゲイなんだ」
エドガー先輩の手が僕の膝に触れた。
「だから鍵なんて知らない。どうしてここに来たのかわかるよな?」
「ここに…ここに、来た…のは」
呆然とする僕に対し、エドガー先輩は容赦なく言い切った。
「アランを襲うために来たんだ」
僕は…僕は一体何をしていたんだ?
今まで、4日も、何を?
何のために?
どうしてここにいるんだっけ?
「アラン、すまない。切り出し方が悪かった」
言葉が出てこない僕を見て、エドガー先輩はベッドから立ち上がり、部屋の反対側に立った。
「そ…んな、先輩が謝ることは、何もないです。少し、動揺しただけで」
「いや、私が悪かった。話をしにきたと言ったのは本当だ。…最後に、どうしても伝えておきたいことがあった」
「最後…?」
最後って、何の最後だろう。
話の最後?今日の最後?
「アランは気づいていたな?最近私の様子がおかしいって」
「はい…。何日かいなくなって、戻ってきたらおかしくなっていて」
「いなくなっていた数日間、私はこのゲームに参加していたんだ」
「え…じゃあエドガー先輩は何度も男を…」
「ち、違う。2回参加したが、どちらもノンケ側でだ。ただ…その2回とも、私は襲われてしまった」
ガタン、という音が聞こえた。
気づいたら僕は立ち上がっていたのだ。
「誰ですか?」
「え?」
「誰に襲われたんですか?その人殺してくるので教えてください」
「待て、落ち着け、アラン。もういいんだ。終わったことだ」
「…シンですか?」
「ど、どうして」
エドガー先輩の瞳に動揺の色が浮かんだ。
「僕が知ってるゲイなんてシンくらいなので、カマかけてみました。すみません。でも、当たってるみたいですね」
「待て待て待て。シンに何をしに行くつもりだ」
コテージから出て行こうとする僕をエドガー先輩が引き止めた。仕方なく、僕は再びベッドに腰掛けた。
「エドガー先輩はシンをかばうんですか?2回も襲われたのに…」
「いや、シンに襲われたのは1回目だけだ。その時も…何かに目覚めそうな感じがしたが、なんとか抑えることができていた」
自分の気持ちがわからなくなって、それが態度にも出ていたということだろうか。
「じゃあ、2回目は誰と?」
「2回目は、アランの知らない人だ。そこでまた襲われて、自分でも触ったことがないような場所を触られて、それを気持ちいいと思ってる自分がとても嫌になった」
「先輩…」
エドガー先輩が苦しんでいたのに、僕は心配することしかできなかった。
僕はエドガー先輩の助手なのに。僕の存在意義って…。
「でも、アランがいてくれてよかった」
考えていたことと真逆のことを言われ、驚いた。エドガー先輩はまっすぐ僕を見て微笑んでいる。
「アランを巻き込みたくなかったから、そっけない態度しかとれなかったけど、アランには本当に感謝している。おかしくなってしまった私のことも、今までと同じように助けてくれて、慕ってくれて、とても嬉しかった」
胸の中に、暖かい気持ちが広がっていく。
「当たり前です!僕は先輩のこと大好きですから!」
「…そうか」
よかった。エドガー先輩がそんな風に思ってくれていたなんて。
エドガー先輩は、さらに僕を喜ばせるような言葉を続ける。
「アランは、会ったときからずっとそうだったよな。あの事件以来…。大学を卒業して、事務所をつくろうってときも、誰よりも親身に手伝ってくれて、しかも一緒に働いてくれて。アランがそばで明るく振舞ってくれていたから、事務所の経営が不安な時も、どうにか頑張ることができた。アランがいたおかげで、事件をより依頼人の意に沿うように解決できたことも多くある」
「ど、どうしたんですか?先輩、褒めすぎです」
エドガー先輩は、普段こんなにはっきりと褒めたりしない。さっき受けていたショックも忘れて、僕は舞い上がっていた。
「だから…アラン、これからも、ずっと一緒にいてくれないか?」
「はい!助手になったときからそのつもりですよ!」
「違う。そういうことではない」
「え?何が違うんですか?」
離れて立っていたエドガー先輩が、ベッドに腰掛けている僕に近づいた。
「私はアランが好きだ」
エドガー先輩は隣に腰掛けて、僕の頭を撫でた。
「男として、好きなんだ」
何も言わせまいとするかのように、エドガー先輩は僕の唇を塞いだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 151