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3人人狼編(10)
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3日目・昼
side:シン
昨日のことは、正直よく覚えていない。
冷蔵庫にお酒が入っているのを見つけ、ヤスと一緒に飲みながらいちゃいちゃしていた。
その後のことは曖昧だ。エドガーがいたような気がするけど…気のせいだろうか。
ただ一つだけはっきり覚えているのは、俺がずっとほったらかしにされたということだ。
今朝目が覚めたときには、誰もいなくなっていた。
ヤスにたくさんの恋人がいることは知ってはいたけど、ここまで実感するのは初めてだ。
ヤスはいつも、俺よりアランのことを優先させている気がする。2人でいるときは優しくて甘い言葉をかけてくるのに、アランが現れるといつもとられてしまうのだ。
アランみたいなのが、あと何人いるんだろう。俺はこれから何度我慢すればいいんだろう。俺はこの先どうなるのか…
「おい」
「…え?」
後ろから声をかけられ、はっと気づいた。俺は上の空のまま集合場所に向かっていたようだ。
…危ない。変な態度をしてると、怪しまれてしまう。
「…何?」
気を取り直して振り向くと、そこにはショウヤがいた。
ショウヤは俺と目が合うと、興味をなくしたようにふっと目を逸らした。
「え?だから、何?」
「別に」
「ええ…?」
「やけに暗く見えたから、声かけただけ」
ショウヤはそれだけ言うと、俺を置いてすたすた歩いていってしまった。
「あ…ありがとう」
ショウヤに気をそらされたからか、いつのまにかマイナス思考はストップしていた。
第一印象から無口で冷たそうな人だと思ってたし、あまり好かれてないのかとも思ったけど、わざわざ気にしてくれるなんて、案外優しいのかもしれないな、ショウヤは。
集合場所に着くと、ヤスもアランもすでに到着していた。
昨日なにがあったのか、気になってしかたがないけど、さすがにここで話しかけることはできない。
やがてあの3人がやってきて、洋子が楽しそうに口を開いた。
「さあ!これで3日目です。昨晩の犠牲者は…いないみたいですね。わたしは楽しかったけど!うふふ」
やっぱり、昨日のやりとりも監視されていたらしい。
ということは、結局エドガーが来たと思ったのは勘違いだったんだろうか。ちゃんと監視してるのなら、部外者が入ってきたら追い出しそうなものだ。
エドガーに大した思い入れはないけど…幻覚を見るほどには印象に残っていたのかなあ。
「それでは、今日の話し合いを始めちゃいましょう!」
<話し合いスタート>
残り人数 12人
シン
ヤス
アラン
ショウヤ
ナツキ
ソウタ
ミコト
マサジ
アキラ
ナルミ
ゴロウ
カエデ
×ヨウ
×ハヤト
アキラ「どうして誰も減ってないのー?夜になるとゲイが襲うんだよね?」
ソウタ「あ、気が変わったんじゃない?!もうこんなゲームやめようと」
ミコト「まったく。これだから馬鹿は困る」
アキラ「えーなんで?そんな言い方しなくてもー」
ミコト「ルールを把握してないお前らが悪い」
カエデ「はいはい!そこまでそこまで。ルールだとね、夜にはボディーガードっていう人も活動できるんだ。ボディーガードはゲイが襲えないように1人だけ選んで守ることができる。昨日はそれがあったんじゃないかな?」
ゴロウ「なるほどなあ。じゃあ、ボディーガードは誰がやってるの?」
誰も手を挙げず、場が静まる。
ゴロウ「あ、あれ?ボディーガード、いないみたいだね」
ナルミ「終わった…。俺たちを守ってくれる人はもうどこにもいないんだ…死のう」
ミコト「お前らも馬鹿だったのか。馬鹿ばかりだな、ここにいるのは」
ゴロウ「えー、きついなあ」
カエデ「もう…。暴言禁止。ボディーガードはまだいると思うよ。でもここで名乗り出ちゃうと、今夜確実に襲われるよね。そしたら僕たちはかなり不利になる。だから隠してるんだ。そう言いたいんだよね?ミコト」
ミコト「ふん」
シン「ボディーガードは置いといて、とりあえず昨日の占いとかの結果発表でもしないか?」
ヤス「そうだね。じゃあ俺から発表するよ。昨日の占いの結果、カエデはゲイじゃなかったよ」
カエデ「…え?僕?」
ナツキ「おお!ということはカエデは本物の占い師ってこと?」
ヤス「いやいや違うよ。俺がカエデを占ったのは、カエデがゲイなのか腐男子なのか腐女子なのかを見極めるためさ。嘘をついてるってことは、その3つの中のどれかだろうから。ゲイならゲイと出るし、腐男子ならゲイじゃないと出るし、腐女子ならこの場には現れない。つまりカエデは腐男子だ」
カエデ「そ、そう来るんだ…」
みんながヤスの言うことを信じたとしたら、カエデの発言はこの先全く信用されなくなる。だが、これでは本物の占い師であるカエデを追放することができない。腐男子はノンケとしてカウントされるから、ゲイに勝てる頭数を揃えるためには残しておかなければならないのだ。
俺としては、カエデはゲイと思わせたいけど、ここでそう主張することは、ヤスが偽物ではないかと疑わせることにもつながってしまうし…。
ゴロウ「じゃあ次に俺が発表していいか?ミコトを占ったが、ゲイではなかったぞ」
ミコト「ふん。当然だ」
カエデ「じゃ、じゃあ僕も発表するよ。ショウヤを占ったけど、ゲイじゃなかった」
ショウヤ「…ああ」
ソウタ「こ、この中の2人は嘘をついてるんだよね…。うう、よくわかんないや。助けて水草たん」
ソウタは両手に水槽を抱えている。
アキラ「だから、全員まとめて追放しちゃえばオッケーだよ」
ナルミ「そんなの何日もかかるじゃないかあ。絶望だ…」
アキラ「大丈夫だよ。自然と減っていく人もいるし」
ナルミ「自然とって、ゲイに襲われてでしょ?死んだほうがマシだ死のう」
ヤス「まあまあ、落ち着こう。誰が本物か考えるためにも、アランの意見を聞いたらどうかな?スパイの結果は?」
一斉にアランに視線が集まる。
アラン「…ああ、なんでしたっけ?」
ヤス「なんでしたっけじゃなくて…ほら、スパイだよ。昨日追放したハヤトは、ゲイだったのかどうか」
アランはいつにもましてやる気がなさそうに見える。やっぱり昨日何かがあったんだろうけど、さっぱり思い出せない。
アラン「そうですね〜…忘れちゃいました。ごめんなさい」
ヤス「わ、忘れた…?」
ヤスが放心している。いつも余裕そうにしているから、こんなヤスを見るのは初めてだ。
ミコト「決まりだな。こいつ、追放」
ヤス「待っ……い、いや、そうだな…」
カエデ「多数決は後でやるとして、この場はもっと話し合ってもいいんじゃない?時間は限られてるんだから、少しでもゲイの正体に近づけるように」
アラン「そうですね!じゃあ僕が、誰がゲイなのか教えてあげますね!」
カエデ「え、ええ?!」
アキラ「おー。楽でいいね」
ヤス「で、でも、アランがゲイだったとして、本当のことを話すとは限らな」
アラン「大丈夫ですよ、ヤスさん!そんなに焦らないでください。ヤスさんがゲイだってことは黙っておいてあげますよ…てへへ言っちゃいました」
ヤス「ぬ、濡れ衣だ…」
カエデ「ヤスがゲイ…か…」
ナツキ「よかったよかった!事はやっぱりカンタンに済んだ」
ソウタ「もう終わったも同然だね、水草たん」
ミコト「ゲイなんて本当にいたんだな…気持ち悪い」
アキラ「毎晩毎晩男を襲おうとするなんて、正気じゃないね」
ヤス「ち、違…」
これはどうすればいいんだ…。
ヤスは完全に素に戻ってしまっている。アランに裏切られてショックってことか?
俺が上手くフォローできればいいけど…
ふとアランを見て、目が合った。アランは冷たい笑みを浮かべている。
本当に一体、何があったんだ?
そしてアランが再び口を開こうとした瞬間…
ショウヤ「待て」
混乱の中、ショウヤの鋭い声が響いた。
ショウヤ「アランの言うことをあっさり信じていいのか?」
アラン「どうしたんですか、ショウヤさん。あなたはただのノンケなのに」
ショウヤ「何があったか知らないが、こんなに態度が変わるのはおかしい。俺たちを罠にはめようとしてるんじゃないか」
シン「たしかにそうだな。本当にアランがゲイだったとして、仲間を正直に教えるとは思えない」
ナツキ「うわー、危なかったな!」
アラン「…まあ、信じないのは自由ですけど」
ソウタ「そ、それじゃ、ひとまずここはアランを追放ってことかな」
ミコト「俺は最初からあいつは気に食わないと思っていたんだ」
アキラ「俺は反対だな」
カエデ「え?どうして?」
アキラ「アランを追放するのは後でもできる。残しておけば、色々と情報を教えてもらえそうじゃん。ここはひとまずヤスを追放すればいいんじゃない?」
ヤス「俺は占い師だ。俺がいなくなると、もう偽の情報しか手に入らなくなるよ」
ショウヤ「アランを残しても場を混乱させるだけだ」
ナルミ「うわーん。もうわけがわからないよ」
マサジ「んん…うるさいなぁ…」
ずっと黙っていたマサジがやっと声を上げた。
マサジ「快眠枕にも騒音には勝てない……今どうなってるの?」
ナツキ「アランかヤスのどっちを追放するか選べばオッケーだ!」
マサジ「…じゃあもう寝るから投票になったら起こしグー…」
ナツキ「うわあ!即寝だ」
アキラ「ところで、結局ハヤトは本物のスパイだったってことだよね」
カエデ「あ…そうだね。アランはどう見ても偽物だから」
アキラ「てことは、昨日ハヤトがゲイだって言ってたゴロウは、偽物の占い師だってことだね」
カエデ「ああ、そういえば…」
ゴロウ「えー、ここで俺に来るかあ」
アキラ「ねえアラン、ゴロウが3人目のゲイなの?」
アラン「さあ…忘れちゃったな。3人目はいつものけ者にされてるから存在感がなくってさ」
怒りたくなるのをぐっとこらえた。
アランはどうやら、俺のことまでバラす気はないようだ。
シン「これ以上アランから情報は出ないんじゃないか?ここで確実に追放したほうがいい気がするな」
アキラ「えー?そうかな…」
俺はもうアランを切ることにした。
このままではアランかヤスのどちらかは追放されてしまう。それなら追放されるのは絶対アランの方がいい。アランと2人で夜を過ごすなんて冗談じゃない。
カエデ「うーん、これ以上話し合っても結論出なさそうだし…各々の考えでもう投票することにしない?」
ナツキ「投票時間だってよ!起きろマサジ!」
マサジ「あと5分…」
ナツキ「待てないぞー!」
洋子「それじゃあ投票に移りましょう!昼なんてつまらないだけですもんね」
<結果>
アラン 6票(シン、アラン、ゴロウ、ミコト、ショウヤ、ナツキ)
ヤス 4票(アキラ、ソウタ、マサジ、カエデ)
ゴロウ 2票(ヤス、ナルミ)
「これで終わりですね…僕の嫌がらせも」
アランは投票結果を満足気に眺めている。
「先輩ー!時間です」
…先輩?
宿泊に使っている建物の玄関がバタンと開く音がした。
そこに立っているのは…エドガーだ。
「おい主催者達。この建物もらっていくぞ…来い、アラン」
エドガーはそう叫ぶと、アランが建物に入った瞬間、建物と島とを切り離した。
「あー!私の自慢の船がー!」
船だったのか、あれは…。
だから建物内にいたのに一晩経ったら移動してたんだな。
船は徐々に遠ざかり、エドガーとアランの姿は見えなくなってしまった。
「うわーん!どうにかしてください、透くん!」
洋子が悲鳴を上げている。
「大丈夫だよ。船、復活!」
透が石を取り出しそう叫ぶと、天から同じ建物が降ってきた。
「わーい!新品に交換されました!」
「まったく便利だよ、この石は。…じゃあ、今日の話し合いはここで終了!みんな戻って戻ってー」
なんだか今日の昼は色んなことが起きたな…。
ひとまず部屋に戻ろうとしたところ、ショウヤに呼び止められ、紙を渡された。
紙を広げると、予想外のことが書いてあった。
『お前がゲイであることは知ってるぞ』
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