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尾行。
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今日はとてつもなく機嫌がいい。
原因は昨日に遡る。
_______…
「なぁ、アンタが料理できねぇなら、俺飯作りに来てやろうか?」
食後の梅昆布茶を吹き出しそうになった。
「な、いいのかい!?とても申し訳ないのだが…」
「…んじゃぁ、アンタの書いた新作を俺に一番に見せるっていう条件は?」
彼が顔を傾け、恥ずかしそうに金髪をいじる。
何なんだその可愛い条件は。
「僕は全然構わない!…でも、君の負担にならないか?」
「いや、俺も食べてくれる人がいた方が作り甲斐あるし、」
それに、と彼が付け加える。
「アンタの本、俺が一番に見れるとか、嬉しすぎるもん。」
その日は鼻血が止まらず、彼を困らせたことを覚えている。
____________…
とまぁ、そんな訳だ。脳内が全て薔薇色になる感覚とはこのことだったのか。
彼が、僕に料理を届けてくれる。
彼に会えるし、あの美味な手料理をまた味わうことが出来る。
今日はまだ昼間になっていないのに早くに起きてしまった。
…9歳下の子に、ここまで翻弄されるとは。人生は本当によく分からないものだな。
小説を打ち込みながら時間をつぶしていると、チャイムを鳴らす音が響いた。
彼だ。
すぐさま玄関へと向かい、彼を迎える。彼は小鍋を抱えていた。
「せんせ、今日一緒に食べない?」
鍋の中身は肉じゃがのようだ。
断る理由があるはずも無く、勿論。と彼を中へと招き入れる。
「肉じゃがなんて、何年ぶりだろうか。」
「へへ、自信作っすよ。」
いたずらっ子のような笑みを零す彼。可愛いなぁ。
_________…
二人で会話をしていると、彼の携帯が震えだす音がした。
すみません、と僕に一言言うと携帯に目を通す。
その瞬間、彼は見たことのないような顔をした。
怯えたような、表情。瞳孔がふるふると揺れている。
「……どうしたんだい、」
「…俺ちょっと用事出来ちゃったんで、帰ります。また、料理持ってくる。」
必死に笑顔を作っているが、怯えを隠せていない。
僕はあまり追求せず、そのまま彼を返した。
そっとしといてあげよう。彼にも色々あるんだ。
なんて、思えるか。
想い人が、あんな表情をしながら他人に会いに行くんだ。
心配するに決まっている。よし、ついて行こう。
これはストーカー行為ではない。決して。
尾行だ。
…尾行だ!!!!
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