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昔、今
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「やだあ!やめてっ!とうさん!やだよお!」
名前を呼ばれて安心するのは、昔のせいだ。
幼い僕に、僕の父さんは、八つ当たりで、犯した。その前だって、暴力されたこともあった。
怖かった。
嫌がったらつよく縛られた。
殴られた。
「やだ………いや」
父さんは、この時、父さんじゃなくなった。
母さんが帰ってくる前に、母さんのお兄さんが来てくれた。
近くに来たついでに、寄ったのだが、家についたら、父さんが荷物を全て持って出てきて、不審に思って家に飛び込んだらしい。
声のする奥の部屋にはいれば、汚された僕がいた。
驚いて、外でゆっくり歩いていた父さんを警察に通報し、救急車を呼んだ。
見た時に、僕はぶつぶつと、言っていたらしい。
「ぃゃ、ぃゃ、ぃゃ…助けて」
虚ろな目で。
救急車とパトカーが家の前に止まり、その後は早かった。
僕は入院。
父さんだった人間は、刑務所。
母さんは離婚。
お兄さんは、僕を酷くせず、軽蔑せずに接してくれた。
お兄さんも、犯されたことがあるらしい。
確かに昔の写真はとても可愛らしい。
僕はこの人と母さんによく似たんだな。
その時には、玲とも友達で、彼も普通に接してくれた。
「はじめまして、祐樹くん」
ある日、母さんの再婚相手が来た。
母さんから次の父さん、と言われて怖くなった。
思い出すのは、あの人間。
でも、その人は優しかった。
避けたり、嫌がったり、無視したり、距離をおいていた僕に優しく言ったんだ。
「祐樹くん。祐樹くんの話は聞いた。辛かっただろう?だから、私に守らせてくれないかな。怖いものから、私が守ってあげよう。嫌だったら良い。でも、素直に、強がらなくても良いんだよ」
その言葉に、泣いた。
誰にも迷惑かけたくない。
そんな気持ちから、普通に接してくれた皆に、自分の気持ちを隠し通してきた。
怖いんだ。だから、助けて。
そんなことも言えずに溜めていた。
なのに、すぐにその新しい父さんは、周りの人がくれなかった言葉をくれた。
でも、体は何をしても忘れなかった。
その事件から5年経って、16歳の時。
高校の部活の先輩と付き合った。
中学の時に、女子と付き合った後に、冷たく突き離されたせいで、女が嫌いになったから、男子校に行った。
先輩は優しくて。
抱かれるのが怖い、と言った僕を大丈夫だと言って、優しく抱いてくれた。
名前を呼ばれながら。
それが嬉しかった。
処理道具じゃなくて、僕を見てくれた。
そんな先輩とよく体を合わせるようになった。
でも、恋人らしいもの。
互いが大好きだった。
ぼくの過去も認めてくれた。
慰めてくれた。
それでも愛してると言われた。
先輩とは、玲に隠れて、まだ会っている。
互いに許しあえるから。
体は重ねない。
でも、心は誰よりも開ける。
玲が他の人と会ってると聞いて、わかった。
僕たちの間には、嘘が多いのだと。
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