アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
たばこ
-
「わか、れ…」
「うん」
ぎし、と音を立てて信乃さんが立ち上がる。
その後ろ姿を見つめる。
「だってさ、2人が別れたら、もう2人も幸せじゃん?僕、平和主義なの。あー、別れるとしたら、家出て行って。どっちかなら良いけど」
タバコに火がつけられて、煙を吐く。
「たばこ…吸うんですね」
「あー、うん。玲ちゃんもでしょ?祐樹くんは?」
「一回試したけど無理でした。…そのたばこ」
「え?これ?」
振り返って見つめ合う。
さっきと全然優しい目だ。
亮太が好きになったこともわかる。
「玲じゃない彼に憧れて、一緒にやろうとしたんですよ。それと同じたばこで。思わずむせたら、彼がたばこを僕から奪って、大丈夫か、って何回も心配してくれました」
こういう時、自分が酷く冷静で。
そう言って、女にも捨てられた。
「いいひとじゃん」
「はい」
それを聞いた信乃さんが、たばこをもみ消す。
「あ、ありがとーございます」
「体に悪いからね」
「…僕、どうしよ」
「それは自分で決めなきゃだよ」
布団の上でシーツに体を絡ませる。
「携帯……」
「あ、リビングで充電してるやつ?とってくるよ」
「ほんと、ありがとうございます」
良いって良いって、と言って、部屋から出て行く。
信乃さんは、少し怖い人だけど。
酷く優しい。
それに、隠さない。
全部、見える。
まるで、彼みたいな感じ。
安らぐ、ような…
「……亮太は、幸せだね」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 205