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玲サイド
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“ごめん。お前に居場所はつくってやれない。祐樹さんと、仲直りしたほうが良い。こんな風にして、悪かった。”
朝起きたら、普段絶対に頭を下げない正則が頭を下げながら謝ってきた。
“俺が全て悪い。祐樹さんとも別れてしまったのも、俺のせい。お前を俺から離れなくしたのも俺。勝手だけど、ごめん。ほんと、ごめん”
何度も何度も泣きながら誤ってきた。
そんな姿見たことなくて。
“もう、関係を全て切ろう”
その言葉で、全て終わった。
互いの携帯には、アドレスも何も残らない。
写真も燃やした。互いの温もりを消し去るように、部屋にある、一緒に使ったものを捨てた。最期に、正則と握手をして、ありがとう、と言い合い、本命の人に会った。
正則に似合う、可愛らしい子。
“美波、っていうんだ。美しい波って書く”
正則の服の裾を掴んで、一歩前に出てきた。
その子はおれを見たあと、少し2人で話す時間が欲しいと言って、あることを言ってきた。
“祐樹くんの彼氏、だよね?”
事情を知っている子だった。
小林さんのとこで知り合ったらしい。
“祐樹くん、ベタ褒めだったよ。好き、って言ってた。僕ね、正則といる人に気づいててさ。くだらないやつだと思ってたら、すごく悲しい顔をしたやつで。だってさぁ、祐樹くんね、冷静なやつって言ったんだよ?なのに……寂しい人なんだね”
全部が本当で。
ただ聞くしかできなかった。
“その様子だと、祐樹くんにふられたんでしょ?…でもさ、祐樹くん絶対、あんたのことが好きだよ”
そう言って、話は終わった。
その後、自嘲的に笑った。
いつもそうだ。
俺を好きになったやつは、謝ってくる。
その度に、俺は随分酷い顔をしてるみたいで、更に謝られる。
いく宛もなく、気がつけば、信乃の家に向かっていた。
駅について、混み合う階段をぼーっとしながら歩いていたら、誰かにぶつかってしまった。
酷く慌てて、俺の顔を見た後に、驚いていた。
祐樹、ごめん。
こんなの、すごく酷いことだ。
人がいなくなれば、代わり。
最低でも、縋れる人がいないと苦しい。
祐樹は結局、違う相手といるらしく、本当に俺と縁を切るらしい。
駅のベンチに座り込む。
「はは……」
ずるずる、と落ちていくようだ。
「醜いな、ほんと…」
下を向いて、顔を手で覆う。
いつから、こんなに弱くなってしまったのだろうか。
「ごめん、なさい」
誰に言うわけでもなく、独り、呟いた。
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