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玲サイド
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「誰」
どかされた手の意味が知りたいから。少しの意地悪。
目は合わないけれど、裕樹の肩がびく、と動いた。
「…玲こそ、誰」
「先に裕樹。お前が作った約束だろ」
「……」
すっかり黙り込み、俯き続け、時折しょうがないように手を弄る。手の先が赤くなっているのを見て、どれだけ寒さを我慢していたのか不思議になる。
「言っても引かない?」
「ああ」
「ほんと?」
「ああ」
しつこい質問に答えれば裕樹の不安気な顔が俺を見つめた。指を弄くり、迷った末に発した。
「今、目の前にいる人」
「…は?」
「だからっ…っ…玲、だって…」
語尾が小さくなっていき、遂に耐え切れず泣き出した。寒くて紫色になった唇が震えている。
「玲、は?」
袖の裾を軽く掴み、腕に縋り付くように頭をくっつけ、顔を合わせない。それを見て、また意地悪したくなった。
「お前じゃない、と言ったら?」
そう言ったら手の甲に裕樹の涙が落ちてきた。少しずつ服も濡れてきてる。
ぐい、と裾を掴んでいた手を引っ張り、体制を崩しかけ、寄っかかってきた裕樹の顎を掴み目を合わせさせる。
「はは…酷い顔」
真剣になるべきなのに、悔しそうに泣いた顔を見て、つい笑ってしまった。
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