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estrum Ⅶ
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発情期の時 いつもなら 絶対触らないで‼︎って思うのに
今目の前にいる人に 大丈夫と言われながら
頭を撫でられると 不思議と落ち着いた
恐怖感なんて全く無くて 小さな子供みたいに
ただずっと 抱き付いていたんだ
「…す…すみませんでした」
「いいよ 気にしないで」
体が元に戻ると同時に 意識もハッキリしてきて
見上げた先にあった目線に
顔の温度が 一気に上がり 慌てて身を引いて謝った
「…えっと…あ……あ…」
『あかーしー‼︎』
梟谷の主将の呼び方では あかしさんなのか
あかあしさんなのかが 判別出来なくて言い淀んでいると
ニコッと笑いかけてくれた
「赤葦 京治 よろしく」
「あ…つ…月島……蛍です」
「月島 体大丈夫そうだね」
「…はい…ありがとうございます」
折角助けてくれたのにどうしても照れ臭くて俯いてしまう
そんな僕を察してなのか
赤葦さんは 無駄に話しかけてきたりなんて事が無くて
何だかとても安心出来た
「抑制剤は 持ってきてる⁇」
「あ はい 部屋に戻ればあります」
「もし 足りなくなりそうだったら
俺 コレだけは大量に持ってるから いつでも言って⁇」
「…ありがとうございます」
…大量に⁇
って どういう意味なんだろう…
そんな疑問は 手に当たった 一枚のタオルによって
掻き消されていった
ソレを見た瞬間 数十分前の出来事が蘇ってきて
羞恥に体が震える
「…それ…黒尾さんの⁇」
「…はい」
どうしよう…
どんな顔して 何て言ったら良いのか見当もつかない
そもそもあの人と対峙する事を考えるだけで憂鬱だ
「俺が返しておこうか⁇」
「…え⁇」
その言葉は 天からの助けに聞こえて
縋る様に赤葦さんを見つめた
「…い…良いんですか⁇」
「良いよ 何もわざわざ月島が行く事ないし
悪くないのに謝る必要も無い」
そんな風に言い切ってくれた事が 本当に嬉しくて
目頭が ジワリと熱くなる
人に頼るなんて ズルイ事だとは思ったけど
僕はその親切に甘える事にした
「…お…お願いします」
「うん」
偲びないながらも赤葦さんにタオルを渡すと
心配しないでと言わんばかりに微笑まれて
咄嗟にまた俯いてしまった
人に気遣われたり 褒められたりするのは苦手だ
どう反応したら良いのか解らない
「立てる⁇」
「あ‼︎ はい」
僕が慌てて立ち上がると
赤葦さんは キョロキョロと辺りを見回してから
ゆっくりと立ち上がった
どうやら忘れ物がないか
この 一瞬でチェックした様らしい
流石 あの梟谷の副主将なだけある
「じゃあ 戻ろうか」
「はい」
赤葦さんの 一歩を後ろを歩く
自然と落ち着くこの空気が
僕の気持ちを和らげてくれていた
「あ」
その時 赤葦さんがピタリと立ち止まり
何やらガサゴソと手元で何かを探している
どうしたのかと首を捻っていると
くるりと僕の方に向き直り 何かを首にペタリと貼られた
「よし」
「…何ですか⁇」
「絆創膏」
「…はぁ」
何で絆創膏⁇
と思ったが この後洗濯をしに行った時
鏡の前で 何の気無しに剥がした僕は
その下にあった赤い跡に
また体中の体温が上がるのを感じた
誰も見てない事を確認すると
そのまま赤葦さんの優しさを そこに貼り直していた
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