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雨
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side――九ノ瀬 碧斗
秋もそろそろ終わりを告げる頃、冷たい雨が降った。
仕事終わりの買い物を済ませ、俺は家への道を歩いている。今日は本当に冷える。
住んでいるマンションの前。花壇にもたれ掛かるようにしてうさぎが倒れていた。
――いや、人だ。うさぎのフードをかぶった……子供? なんか、今にも死にそうだな……。
そいつの目の前にしゃがんだ俺は、その姿を見て一瞬目を疑った。
うさぎのフードがついたローブに薄手のシャツ。そいつはそれだけしか纏っていなかった。
シャツから覗く足や腕には痣や切り傷や火傷。しかも、それも古いのや新しいのまで数え切れない程ある。
「なぁ、おい、お前大丈夫か」
少しだけ肩を揺すると、そいつはビクッと体を震わせて目を開けた。
良かった、生きてる。
「……な……さい……ごめ、なさ……っ」
俺の顔を見て――いや、こいつ俺のことを見ているわけじゃなさそうだ。俺に、誰かを重ねているのか?
地面に倒れ込み、這うようにしてその場から逃げようとする。
泥塗れになるのも、アスファルトに擦れて傷が出来るのも構わないくらい必死で。
「い……ゃ、だ……痛いのも…苦しいのも……も、やだよぉ……っ」
ズルズルと体を引きずって逃げるそいつに、あぁやっぱり訳ありなんだなと思う。
だけどなんとなくこのまま放っておけず、ちょっと無理矢理だけどそいつの事を担ぎ上げた。担いで、その軽さに驚く。
え、こいつ、軽すぎないか?
いくら子供って言っても、こんなに軽いものか……?
最初こそ「離して」「やだ」「こわい」と抵抗していたそいつがだんだん力を無くしていく。
最終的にピクリとも動かなくなったそいつに、流石にやばいんじゃないかと焦る。
取り敢えず、俺の部屋に連れていこう。
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