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お粥
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「お前さ、顔と名前が覚えられないって言ってたな。覚えられないのは顔と名前だけか?」
「あ……えっと…声は、ぼんやり、と…寝ると忘れちゃうこと、多いけど……」
なるほどね。てことは、外に出て偶然虐待してた奴と出会ってもコイツにはわからないわけか。
それはちょっと厄介だなぁ。
「顔、見てもわからない……から…僕、声で人見分けてて……ごめんなさい…」
ベッドの上で正座をしながら項垂れる真白。
思わず撫でようとして、既のところで思い止まる。
真白にとって、触れられることは恐怖のはずだ。なら、なるべく触れないようにした方が良いだろう。
「謝るのは、悪い事をした時。お前は何も悪くないんだから謝るな」
「ご、ごめ……はい」
謝るのは癖みたいなものなのだろうな。
そういえば、今何時だ?
時計を見ると針は11時を指していた。
随分寝てしまったようだ。
「腹減ったろ。お粥なら食えるか?」
結局昨日は飯も食わずに寝てしまった。まぁ、真白は食えるような状態じゃなかったけど。
「おかゆ……ごはん…?」
真白は呟きながら首を傾げた。
まさか、お粥を知らない?
具合が悪くなった時とかに親に作ってもらったりして――ないか。
恐らく、具合が悪くなってもコイツは倒れるまで我慢するだろうし。
「そう、ごはん。作ってくるから、熱測って待ってろ」
体温計を差し出すと、真白はそれを受け取りしばらく眺める。
そして、今度は困惑したように俺を見た。
あー……使い方、知らねぇんだな。
「こう、脇の下に挟んでピピッて音がなるまでじっとしてて」
ジェスチャーで伝えると、こくこくと頷き体温計を脇に挟んだ。
伝わったみたいで良かった。
「んじゃ、作ってくるから」
正直1人にするのは不安だが、外出するわけじゃないし大丈夫か。
一応ドアは開けとくか。
キッチンに立ちお粥を作り始める。
一人暮らしをしているおかけでそれなりに料理はできるようになっていた。
まさか、初めて手料理を振る舞う相手が男で、しかもお粥になろうとは……。
でも何でか嫌な気はしないんだよなぁ。
15分くらいでお粥は出来上がった。
器にあけ、梅干しを乗せる。うん、なかなか美味そう。
お粥を持って寝室に向かうと、ベッドの上で真白が倒れていた。
ぎょっとするが、どうやら寝てるだけみたいだ。
びっくりした……。
体力、落ちてるんだろうな。
ベッドの傍に寄ると、真白は体を震わせ目を開けた。
さっきもそうだけど、コイツは物音……特に足音には敏感なようだ。
「お粥、持ってきたぞ。自分で食えるか?」
スプーンを差し出すと、真白は少し間を置いてそのスプーンを受け取った。
なんだ、今の間。なんか、すげー引っかかるんだけど……。
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