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知らない気持ち
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side 真白
嘘だ。嘘だ。
今まで、僕を捨てなかった奴は1人もいなかったじゃないか。
『綺麗な子が家に来てくれて嬉しいよ』
『これでお前は2度と俺から離れられないな』
『一生遊んであげるからね』
みんなそう言って、心に、体に、消えない傷を残した。
それなのに最後は——
『そろそろ潮時かねぇ』
『なんか飽きてきたからもう捨てよう』
『だんだんその反応も面白くなくなった』
そうしてあっさり僕を捨てた。
残ったのはボロボロの体と空っぽの心。
なんで。
あんなに喜んでたじゃないか。
綺麗な子が来た。玩具が来たって。
どんなことでも、必要とされてるんだって思ったから我慢できたのに……。
「嘘じゃない。信じてくれ、真白」
2度と、誰も信じないって誓ったじゃないか。
それなのに——
たった1度優しくされただけで、信じてしまうの?
この人は違うかもしれない。
そんな訳ない。
もしかしたら本当に捨てないかもしれない。
いつか必ず捨てられる。
信じても、大丈夫かも。
信じれば、辛いのは、苦しいのは……僕だ。
「頼む、真白。1度だけ、ちょっとでもいいから、俺を信じて」
「……っ」
どうして。
今まで、そんな言葉で揺らいだ事なんてなかったのに。
どうしてこんなにも心を掻き乱すの。
どうしてそんな風に優しく僕を抱き締めるの。
どうして、そんな優しい目をするの。
知らない。こんな気持ち、僕は知らない。
「……本当に、捨てない…?」
「捨てない」
「嫌い、に…なったらどうするの……」
「そんなこと考えてねぇな。嫌いになる予定ないし」
「……変だよ」
「変でもいいさ」
信じれば、裏切られた時に苦しいのはわかってる。
でも、それでも。
もう一度だけ。
この人なら、信じてみても、良いのかな。
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