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りんご
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少し上せ気味の真白をソファに横たえる。焦点が定まっていない。
体力を使って眠いのか、閉じそうになる目を必死に開けている。
眠れば良いのに、と言おうとし口を噤む。もしかしたら眠りたくないのかもしれない。
真白は眠っている時、酷く辛そうな顔をする。きっと良くない夢を見るんだろう。それでも、睡魔は容赦なく襲ってくる。
とうとう、真白の瞼が落ちた。洗って乾かしておいたうさぎのローブを掛けてやると、縋るようにそれを掴み寝息を立てる。
せめて、夢の中でくらい救われたら良いのにと思う。
なるべく足音を立てないようにキッチンへと向かう。
多分目を覚ましただろうが、またすぐ眠るよな。
まな板の上に置いてあるりんご。
真白の味覚が、極限まで鈍くなっているだけだとしたら。
果物とか、冷たいものとか、そういうものならもしかすると味を感じるかもしれない。
ほんの少しでも味がすれば、少なくとも食事が苦ではなくなるんじゃないだろうか。
とりあえず、何か食べさせないと薬も飲ませられないしな。
「すりおろした方が食いやすいのかな……」
とりあえず、半分だけすりおろすか。
残りの半分は、8分の1くらいに切る。
確か、塩水につけておけば色は変わらないんだよな。
「真白」
「ん……ぅ…」
名前を呼ぶと真白は小さく唸り目を覚ました。ぼーっと俺の方を見つめてくる。
「りんご、食えるか?」
「りんご…ごはん……?」
「そう、ごはん。何か食べないと薬飲めないから」
体を起こしてやりスプーンで掬ったりんごを差し出す。
きゅっとローブを握り、それを咥えた真白の目がびっくりしたように丸まる、
「……味が、する」
「本当か?」
「はい……少し、だけど…」
もう一口差し出すと今度は躊躇いなく口に含んだ。
やっぱり、時間を掛ければ味覚は戻るかもしれない。
「こっちも食う?」
「わぁ……っ」
固形のままのりんご見せる。真白がおもちゃを見つけた子供のような表情を浮かべた。
俗に言う、うさぎりんご。見様見真似で剥いてみたが、我ながらうまく出来たと思う。
「すごい、うさぎさんだ、すごい!」
小皿にうさぎりんごを乗せ、真白の手に乗せてやる。
両手でそれを持ち、色々な角度から見ている。
食べられるかどうか聞いたら、少し悲しそうな顔をした。
「うさぎさん……食べる、ですか…?」
「あー……じゃあこっちだけにするか」
結局、すりおろしたりんごを4口ぐらい食べたところで食事は終了した。
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