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車椅子
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真白と過ごし始めて一週間が経った。
来た頃に比べたら、真白は少し元気になったように思う。
まだ食べる量は少ないが、以前程苦しそうに食べる事はなくなった。相変わらず味覚は鈍いままみたいだが。
「真白」
「はい……?」
「買い物、行くか」
俺の言葉に、真白は少し首を傾げた。
「デパートに行こう」
「お外…ですか?」
「そう、外」
食料品は日用品が底をつき始めている。そろそろ買い物に行かなければと思っていた。
それに、このままここにいるにしろいないにしろ、真白にも必要な物があるだろうし。
とりあえず服を買ってやろう。いつまでも俺のを着せておくわけにもいかないし。
「あの……でも、僕…」
真白は自分の足へと視線を落とすときゅっと手を握りしめた。
あぁ、歩けないの気にしてるのか。
「歩けなくても大丈夫だよ。車椅子使うから」
「くるまいす……?」
不思議そうに真白が首を傾げた。車椅子、知らないのか。
「そう。1回乗ってみるか」
裕人に借りた車椅子を広げてみる。それに釘付けになっている真白を抱き上げた。
最近ではこんな風にあまり怯えず触れさせてくれるようになった。
それだけですごく嬉しい。
真白を車椅子に座らせる。キョロキョロと車椅子を眺め、また俺に視線を戻した。
「これ、動く……?」
「うん。俺が押してやるよ」
背後に回ると、真白が嫌だと首を振る。
「あ……やだ、これ…っ」
小さく震えながら、真白は体を縮こまらせる。久しぶりに見たような気がする。こんなに怯えた真白。
「何が嫌?」
「お兄さんが……見えな、い…」
ああ、なるほど。背後に回るから俺のこと、見えないんだ。
1度でも見えなくなると、真白は声を聞くまでその人が誰なのかわからなくなるらしい。
顔を覚えられない。本人はそう言っていた。
「じゃあ、これでどうだ?」
真白の手に小さい鏡を乗せてやる。
それを興味深そうに眺めた後、真白の表情が少し和らぐ。
「見え、ます」
「それなら平気か?」
真白がこくんと頷いた。
妹が遊びに来た時に忘れていった物が、まさかこんなところで役に立つなんてな。
本当はおぶってやりたいが、そんなことをすれば注目の的になってしまう。
他人からジロジロ見られるのは真白にとっては恐怖のはずだ。
でも、少しずつで良いから外の世界に触れさせてやらないと。
「それじゃあ、行くか」
「はい…」
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