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着信
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side 碧斗
真白がいなくなってから、何もやる気がおきない。
どれだけアイツでいっぱいになってんだと思うと、思わず笑いが出た。
ふと、テーブルの上に放っていた携帯が着信を知らせる音を鳴らした。
画面に表示されているのは知らない番号。
俺に電話を掛けてくる奴なんて裕人か、会社の人くらいだ。
恐らく、会社の上司。
正直、今は仕事をするような気分じゃないんだが……。
「……はい、九ノ瀬です」
『こんにちは、九ノ瀬さん』
知らない声。――いや、俺はこの声の主を知っている。
雪の降るあの日、真白を迎えにきた男。
「……何の用ですか」
『ふふ、そんなに警戒しなくても。良い知らせと悪い知らせがありますが、どちらから聞きます?』
楽しそうな声に苛立ちが募る。
答えようと口を開いたところで、電話の向こうの声に遮られる。
『あっ、やっぱり良い知らせからお話しますね。個人的に貴方には絶望して欲しいので』
笑い声と共に発せられた言葉に怒りを通り越して呆れた。
人をおちょくって何が面白いんだか……。
『では、本題に入りましょうか。父さん――あ、真白を閉じ込めていた人なのですが、あの人が真白に飽きたようです。もういらないから処分してと言われたので、四条凪彦さんに引き取ってもらいました』
四条凪彦……あぁ、裕人の兄貴だ。
というか、処分って何だよ……真白は人間だ。物じゃねぇんだぞ。
『それで、悪い知らせなんですけど……真白ね、きっと完全に壊れましたよ』
……は?
壊れたって、どういう……
『もしかしたらもう元には戻らないかもしれませんね? まぁ、父さんが興味を示さないあの子のことなんて俺はどうでもいいんですけど』
本当に興味が無さそうな声に思わず携帯を握る手に力が入った。
どうでもいい?
ふざけんなよ。自分の子供だろう。
それなのに、辛い思いをしているのにどうでもいいだと?
「……ふざけんな」
『ふざけてません。では、用件はそれだけですので』
ブチッと電話が切れる。
携帯を叩きつけそうになるのを必死に堪え、裕人へとメールを打った。
『碧斗がどうしてその事を知っているのかわからないけど、確かに真白くんはうちの病院にいるよ。精神科の105号室。でも、行くなら覚悟して行った方がいいよ』
裕人から届いた返信。
覚悟って……どういうことだ?
取り敢えず必要最低限の物だけを持ち、俺は自宅を後にした。
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