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うさぎさん
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side 碧斗
拒否されると思っていた。
この人の家になんて行きたくないと。
今のコイツにとって俺は、“自分に酷いことをする知らない誰か”なんだろうし。
それでも、震える小さい声は確かに「一緒にいたい」と言った。
誰に決められたわけでもない。真白自身の意思で。
「……あの、ダメ……?」
不安そうな視線が俺のことを捉える。
「ダメな訳ないだろ。一緒に帰ろう、真白」
俺の言葉に真白は嬉しそうな顔をした。もしかして、笑ってる?
撫でたくなるのを必死に堪えた。さすがに2回もあんな拒絶されたらへこむ。
しかし、“うさぎさんと一緒にいたい”って……俺はあくまで“うさぎさん”なのか。
「それじゃあ決まりね。九ノ瀬くん、あなた今日お金は持ってる?」
「ええ……まぁ」
「なら大丈夫ね。退院許可をだすわ。今日の夕方くらいには帰れると思う」
あまりにもさらりと言うから少し面食らってしまう。
なんでも、真白は成人しているから基本的に主治医の許可さえあれば退院出来るらしい。
「九ノ瀬くん、話があるの。いいかしら?」
ドアの外から呼ばれる。ここじゃ都合が悪いのか。
1歩踏み出したところで控えめな力に引き止められた。
「うさぎさん……行っちゃうの……?」
「ごめんな、すぐ戻ってくるから。真白は少し寝とけ」
渋々といった様子で頷き、ようやく俺の服を離す。素直に横になると、そのまま目を閉じた。
程なくして寝息が聞こえてくる。
目を覚ますまでには、戻ってこないと。
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