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ピカソ
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2週間目、3度目の美術の授業。
絵を描くのは好きだった。鉛筆一つで光や影を描くのは特に、わくわくした。
でも、高校の美術の授業は初っ端から絵を描かせてはくれなかった。
「この右下のは何に見える?プリントの四角に書いてみて」
おじいちゃん先生はピカソのゲルニカが載った資料集を指差してみせながら訊く。そしておれたち生徒は、自分の資料集を見ながら鑑賞、という授業なのだけれど。
「うわっ」
ガタッと音がして、机から肘が落ちる。気づかないうちに、眠ってしまっていたのだ。絵を見るのは好きだけど、おじいちゃん先生の声で説明されると眠くなる。
「じゃあ最後にゲルニカについてまとめます。プリントの5番を見て、ね。ゲルニカは、ほにゃらら年に、誰々が…」
先生は問題を出すような口調で話すけど、寝ぼけてまだ視界がはっきりしないおれはそれでもメモを取ろうとプリントを睨む。けど、先生の言ってる5番ってどこだよ、と必死に探していた。
「ここ」
ささやくような声とともにおれのプリントに指が伸びた。それが裕也だったわけだけど。裕也はおれの目が5番をしっかりとらえたとわかると、おれがお礼を言う前にスッと手を引っ込めて先生の方を向いてしまった。
「えーっと、ゲルニカは1937年にパブロ・ピカソによって…」
そしておれも、おじいちゃん先生が穴埋めの答えを言い出したので慌てて青いペンを手に取った。
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