アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
1
-
「今日、このまま帰んの?」
まだ熱いのが収まらなくて、顔を見られないようにしたまま問う。
此方からも委員長の表情は見えないが今はそれで良いとさえ思った。
俺にしては優しく、窺うように聞いたのは、受け入れられるかどうか分からないからだ。
やたら時間を長く感じながら、委員長の返事をひたすら待った。
「……やっぱ、来なくていい」
痺れを切らして言い出したのは、俺の方。
委員長はずっと黙ってた。
余計顔を合わせ辛くなって、視線を外したまま立ち上がる。
心臓はずっと煩いままだ。
早く寝ろよ、とだけ言って踵を返す。
一刻も早くこの場から離れようと一歩踏み出した時、後ろから服を引っ張る力に気付いた。
いい加減振り回されすぎだ、と自覚する程早く、このまま立ち去るという選択肢は打ち砕かれてしまう。
未だドクドクと落ち着かない鼓動が更に上がるのを感じながら、振り返った。
「か、帰りたくない。…ごめん」
「……何で謝んだよ」
俺の心臓とは逆に、お互い静かな声でポツリと呟いた。
会話と言うより独り言のようだ。
不安な気持ちを拭えないまま盗み見た委員長の姿は、やっぱり一段と小さく感じる。
自分の力では立ち上がれそうに無い相手に手を差し伸べる。
馬鹿にするな、と振り払われるだろうか。
普段の委員長を思い出してまた弱気になったが、差し出した手を引っ込める前に、縋り付く様に掴まれて軽く驚いた。
「連れて行ってやるから、泣くな。」
何が委員長をそこまで不安にさせるのか分からないが、謝ったり、しなくていい。
そういう気持ちで吐いた言葉だが、相手には挑発的に聞こえてしまったかもしれない。
泣いてない、なんて聞こえてきた気もしたが、俺の頭の中の委員長が勝手に口を出したようにも思えた。
どちらにせよ力無い手が離れてしまわないように、出来る限り強く握り返した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
96 / 102