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「あんな噂が流れて、こんなことになったのは彼のせいだよ」
「……」
返す言葉が見つからない。
やっぱりあいつのせいだったんだな、と納得する反面、何とも言えない空虚感が俺を襲った。
「南河が……」
自分でも考えが纏まらない内に口が開く。
だけどその後は微かな息が漏れただけで、開いたは良いもののまたすぐに閉じてしまった。
こんな状況でも頭に映し出されるあいつの姿は、不器用に優しい、何とも憎めないもので……
「京君!」
あやふやな思いを遮るように唐突に、聞き慣れた声が倉庫に響いた。
「寺野……」
「京君、どうしてこんな所に!」
慌てた様子で寺野が俺に駆け寄る。
何時ものクールな姿からは想像もつかないくらい余裕の無い表情だ。
それに、今までずっと探してくれていたのだろうか
少し汗を掻いている。
「寺野、俺」
そんな寺野を見ると、一気に罪悪感が押し寄せてきた。
ずっと心配してくれていたのに、こうなる事が予想出来なかったとは言えなんて事したんだろう。
「ごめ…っ!?」
しかし謝罪の言葉を言う隙も与えずに、両手で頬を掴まれ無理矢理上を向かされた。
「…………」
「あ、あの……?」
俺の顔を間近で見た寺野の表情が瞬時に険しくなる。
それと同時に空気まで冷えきってしまったのでは無いだろうかと思える程に、鋭い。
こんな寺野を知らない俺は簡単に、黒髪の間から覗く瞳から目が逸らせなくなってしまっていた。
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