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真相 (龍之介side)
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「嘘寝とか、ジンさんマジで、ひでーよっ!」
組織本部の地下に位置する士官用の食堂に陣取り、苛立しげにガツガツと大量の飯を食らいながら、マコトがテーブルを囲むジンに詰め寄った。
「悪ぃ。起きた瞬間、ふとこりゃ使えんなって思ってよ」
「だから、何でそんなことしたかを聞いてんの!」
のらりくらりと真剣味のないジンの対応に、ついにマコトがブチ切れた。
食卓に並ぶナイフに手が伸びたのを見て、危険を察知したユージンがとっさにその手をつかむ。
ユージンが密かに視線を送ってきた。
いざという時は二人で抑えるぞと、頷き合う。
ナイフを持つと、マコトは人が変わる。
寝た子は起こさないのが、日常を平和に過ごす上での大原則なのだ。
もちろん狸寝入りに腹を立てているのは自分も同じだったが、さすがにこれ以上、病み上がりのジンの身体に傷を増やすのは本意ではない。
と、ようやく鎮火しかけた怒りに油を注いでくれるのは、やはり空気を読まない育ての親で。
「ちっちぇえナリして、元気だな」
ピンポイントにマコトの地雷を踏み抜いてくれた。
周りのピリピリムードに気づいているのかいないのか、否、気づきながら嬉々として不穏に向かっていく姿を見て、懐かしさを感じてしまう自分は、もはや病気なのかもしれない。
もういい、おまえなんざ勝手に切り裂かれてしまえと、ため息の中で天を仰いだ時だった。
マコトの額に青筋が浮いたのとジンが口を開いたのが、ほぼ同時だった。
「見てのとーり、オレにベッタリなダイゴのアホウが、少しは自立してくれるんじゃねーかと思ってよ」
ジンにぴったり寄り添う大男に、みなの視線が集中した。
「死にかけた後じゃ、今まで以上にひっついてくんのは目に見えたし、そんなのうぜーだろ? 先手必勝で一芝居打ったってわけだ」
「……望み通りの結果が出ねェ時は、どーするつもりだった?」
つい、気になって横槍を入れると、
「そんなん、黙って消えるに決まってんだろーが」
当たり前のように、あっけらかんと言い切られた。
やはり、そうくるか。
最期の瞬間、共に逝くことは許しても、依存するような男にジンは惚れない。
ダイゴの額に大粒の汗が浮かび上がった。
「さんざん渋ってたみてぇだが、一応最後は離れたし、まぁギリギリ合格やるかってな。リューの男前な演説も聞けたし、オレとしちゃ何気に大満足だ」
「そりゃ、ジンさんは満足かもしれないけどさ……、巻き添え食いまくったオレの身にもなってほしーよ!」
真相を聞かされたところで、到底納得できる理由ではなかったらしく、マコトの愚痴は止まらない。
「ユージンとは離されるわ、いきなり見知らぬ部隊に放り込まれるわ、リーダー任されて目の敵にされるわ! 見た目でガキ扱いされるし、ホントマジ最悪だったんだからな!」
「なに、おまえらって、そーゆー関係?」
「えっ!? あ……、まぁ……」
ジンが己の恋人の父親だったと思い出したマコトの頬が、ほんのり染まる。
一気に形勢逆転だ。
ジンはテーブルに頬杖を突くと、何やら楽し気に身を乗り出した。
「このカタブツ落とすなんて、やるなぁ、チビッコ。で? お子様が、ちゃんとヤるこたヤッてんのかよ?」
「チビッコ……っ、その辺りはとっくにクリアしてますから! ご心配なくっ」
チビッコ、お子様と繰り返された反動で暴走しまくる恋人に、ユージンが額に手を当てて、ため息をつく。
「そりゃ、けっこう。こいつがまだ童貞だったら、さすがにそろそろ誰か世話してやんなきゃって思ってたとこだ」
「……大きなお世話だ」
これにはさすがのユージンも、露骨に嫌そうな顔をした。
「ジンさん、心配し過ぎだって。てか、オレとの時が初めてって感じでもなかったし?」
「……オレも男だ、それなりに色々とある」
「……へぇ、色々と、ねぇ?」
「……自分で煽っといて、不機嫌面すンな。めんどくせェ」
痴話ゲンカなら他でやれとばかりに冷たい視線を投げれば、
「何だよ、リューなんて、オレやルイが士郎と少しばっか仲良く話してただけで、すっげー目で睨んでくるくせに!」
いかんせん、お鉢がこちらに回って来た。
「おっ、あの日本刀みてぇな美形な。ありゃ、いーわ。オレでも泣かせてみたくなる」
ジンが伸びかけの淡い色のアゴヒゲを撫でながら、ニヤリと笑った。
瞬間、手に持っていたフォークの刃先を、無意識にジンの頸動脈に当てていた。
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